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人事考課の新潮流・・・パフォーマンス・デベロップメントへの転換
 
       
2017年2月24日    今年もビジネスの世界では、とても気になる昇給・昇格の時期が近づいてきた。「いいかげんアメとムチをやめよう」と提唱したのは「モチベーション3.0」で有名なダニエル・ピンク氏である。
 ピンク氏は、生存を目的とする最初の動機づけを「モチベーション1.0」、アメとムチによる外発的動機づけを「モチベーション2.0」、そして内面から湧き出る目的意識によって自らを動機づけることを「モチベーション3.0」と定義した。そして、「信賞必罰」式の報酬が内発的動機づけを消滅させ、創造性を破壊し、人間の好ましい言動を阻害していると指摘している。
 日本企業はバブル崩壊以降、多くの企業が年功序列的な職能資格制度を改め、当時グローバルスタンダードといわれた成果主義人事および目標管理(MBO)に連動した人事考課(目標連動型評価制度)の導入を図ってきた。しかし、さまざまな企業において長時間労働は解消されず、働き方改革に取り組んでも一向に改善の兆しはみえてこない。成果(質)が重視されているのに、なぜ長時間労働(量)は解消されないのか。その原因の1つとして、業績管理(パフォーマンス・マネジメント)のあり方を見直す必要がある。
 「パフォーマンス・マネジメント」とは、社員の能力とモチベーションを引き出しながら、同時にビジネス上の目標達成を行うことを目的としたマネジメント手法である。戦略ビジョンや目標を定め、目標達成に繋がるアクションを本人とともに考え、行動の結果に対して継続的にフィードバックすることで気づきを与え、ハイ・パフォーマンスが身につくよう促す、と解説されている。だが、業績目標を上から配分するマネジメント(MBO)では、数字を見ているだけで、個人の内面(モチベーション)は見ていない。一人ひとりがどうすれば意欲を高めるかといった個人の動機や個々人によって異なる強みは考慮されていない。業績考課は、もっぱら報酬ばかりに活用され、個人の成長・育成・キャリア開発に有効活用されていない。それが、ピンク氏が指摘する「動機づけの消滅」に結びついている。
 すでに、欧米のグローバル企業を中心に業績管理(Performance Management)のプロセスに代えて、管理者のリーダーシップを強化し、社員の動機づけを行い、業績の最大化を目指す新しい人事考課の流れ(Performance Development)が注目されている。
 
 パフォーマンス・マネジメント誕生の歴史
 人を評価するための人事考課は、日本企業だけでなく欧米企業においても研究と改善の歴史でもある。パフォーマンス・マネジメントは、1970年代に米国のコンサルタント、オーブリー・C・ダニエルズ氏を中心に「目標の達成に向けた、メンバーの自発的な行動を促すことを目的とした人材マネジメント手法」として紹介された。この手法は、各メンバーの行動とその結果に着目し、目標達成につながる「望ましい行動」を増やし、「望ましくない行動」を減らすために、客観的な計測(評価)結果をフィードバックするというものである。
 その後1999年には欧州最大の人材開発協会(CIPD)が、アームストロングとバロン氏によるコーニン社の調査とケーススタディに基づき「戦略実現のための全体最適を目指す総合人材マネジメント手法」として提唱された。ここでの特徴は、評価制度と人材育成の双方に重点を置くこと、各人に具体的な目標を設定し管理職と社員は目標達成に向けて協力すること、個人の強みと弱みを特定して社員個人の人材プロファイルを作成すると同時に、組織全体の知識・スキルを特定した人材マップを構築することが要件とされている。
 ただし、当初から「人事考課からパフォーマンス・マネジメントへ」という流れの中で、この新概念が出てきたのではないことに注意しなければならない。1970年代には、米国では既に目標管理(MBO)が抱える内在的な問題点が指摘されはじめ、それを克服する概念としてパフォーマンス・マネジメントに焦点があてられたのである。

 日本企業が参考にした成果主義で企業業績は向上したか
 社員を強制分布で選別し、ボトム5〜10%にランクされた社員を組織から排除する「成果主義人事」は、「ベストプラクティス(最良の事例)」として多くの日本企業が参考にしたが、社員や労働組合の反発により、取りやめた企業もまた多いといわれている。
 このような状況を受けて「成果主義人事」は日本の文化に合わないという議論がある。だが、重要なことは文化の違いではなく、企業が成功したかどうかである。確かに、人の辞めない会社は良い会社かもしれない。ただしそれは、社員がその会社のビジョンや文化が好きで、仕事にやりがいを持って取り組んでいる場合である。「居心地がよく誰でもやっていける会社」が本当に存続していけるかどうかは、もう一度考えてみる必要がある。
 成果主義の重要なパーツとして、多くの日本企業に定着した目標管理にも同様なことがいえる。目標管理は、会社の業績目標をブレークダウンして個人の目標に落とし込むという業績管理としての機能を持つ。しかし、設定した目標の達成度が個人の処遇と結びついているという現状に問題が提起されている。つまり、「達成しなければ処遇が悪くなる」ということから、設定する「目標はできるだけ低く」という圧力が働くのも事実である。
 そもそも、「目標管理の役割とは何か」という原点に立つと、課題がいくつか見えてくる。.咼献優拘超の変化が早く、半年・1年前に立てた目標が実態にそぐわなくなる。つまり、目標に含まれていない、突発的な変化への対応が遅れるなどの弊害が生じる。∋間を経てからフィードバックを受けるという後追いの仕組みでは、評価対象者の納得感が薄く、経験学習につながらない。4浜職も記憶が薄れ、評価結果を納得させるための面談になりがちで、社員のモチベーションのアップには結びつかない。
 現在は、想定外のことが次々に起こる「VUCAワールド」の時代といわれている。スピード感の欠如したパフォーマンス・マネジメントに代わる新しいマネジメントツールが求められている。

 VUCA時代に求められるリーダーの資質
 VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉で、現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとして使われている。
 もともとは、1990年代後半の米国で生まれた軍事用語が、2010年頃から経営者の間で経営環境や市場の現状を示すビジネス用語として使用されるようになった。その後、2014年のASTD(米国人材開発機構)コンファレンスや2016年の世界経済フォーラム(ダボス会議)で多用されたことで、ビジネス界でも広く認知されるようになった。
 未来は予測できず、適応することしかできない。となれば、現実に適応する力を高める必要性がある。また、その状況に関わる人々がお互いに信頼し、チームとして一体感をもった状況でないとチームの目標は達成できない。これを実現していくためには、VUCAに対応できる資質を持つリーダーの存在が不可欠である。
 では、VUCA時代に求められるリーダーの資質とは、一体どのようなものか。
今後自社はどうあるべきか、何を目指していくのか、市場や社会とどう向き合うのか、自社の描くビジョンやシナリオを正しく理解し、チームに浸透させる能力。
  常に幅広い情報を収集し、あらゆる角度から適切に分析する能力
  予測不能な事態に備え、常に複数のシナリオを想定する能力
  チームメンバーが問題意識を持って迅速に決断し、行動できるようサポートする能力
  軌道修正が必要になった場合に柔軟に対応できる能力
 つまりリーダーに必要なのは「将来は完全には予測できない」という前提で常日頃から不測の事態に備えられるよう、チームをマネジメントすることである。そして、チームメンバーが組織のビジョンにもとづき、状況に応じて最善と思われる行動をし、その結果から学習し続けられるよう、促し続けることだといえる。

 パフォーマンス・マネジメントからパフォーマンス・デベロップメントへ
 競争が激しく、業績が上がらなければ、企業はたちまち存亡の危機に瀕する時代だけに、「数字」を上げることが最重要と考える人が多くなるのも十分に理解できる。しかし往々にして、結果だけを追い求めても、目標はなかなか達成できない。では、どうすれば良いのか。
 「組織の成功循環モデル」を提唱したダニエル・キム教授は、一見遠回りに思えても、組織に所属するメンバー相互の「関係の質」をまず高めるべきだ、と述べている。組織の関係性の質が高まると、「個人の思考の質」や「行動の質」もよい方向に変化して、「結果の質」の向上につながる。良い結果が出ると、メンバーの相互信頼が深まり、さらに「関係の質」が向上していく。このグッドサイクルを回すことが、組織に持続的な成長をもたらしていくことを指摘している。
 組織変化を生み出すためのフレームワークには、自分自身、自分と相手、グループ、組織、環境、の5つの領域がある。まず自分自身の変革からスタートし、次に相手をリードしていく、そのうえで更に上のステージをリードしていくことで、最終的に組織変革を生み出すリーダーが生み出されるといわれている。ここでグッドサイクルを回すために役立つビジネスコーチングの手法を紹介したい。
 それは、「フィードバック」と「フィードフォワード」の機会を増やすことである。フィードフォワードとは、その言葉からも分かるように、フィードバックの反対の意味を持つ言葉である。簡単に言えば、自分が変革するためのアイディアを周りの人からできるだけ多くもらうことである。半年・1年の単位ではなく、できるだけ多く・タイムリーに行うことが肝要である。
 次に、事前にメンバーをモチベーション(横軸)とスキル(縦軸)の2軸からマトリックスに記し、組織全体の人材分布を明らかにする(4つの象限から構成)。実際に面接を行う際には、これを基にフィードバックとフィードフォワードを以下の要領で行うのである。
 ‖1の象限は、モチベーションもスキルも高い人である。ここに属する人たちは自分で考え行動できるので、適宜承認したり、ほめてあげたりして、やる気を保ってあげるとよい。
 第2象限の人は、モチベーションは高いが、スキルは低い人なので、やり方やテクニックを具体的に話す必要がある。
 B3象限の人は、スキルは高いがモチベーションは低い人で、評論家のようなタイプともいえる。この部類の人たちには、実行する意義をしつこいくらいに何度も話すことが重要である。
 ぢ4象限の人は、モチベーションも低く、スキルも低い人である。こういうことをやってほしい、と細かく伝え、手本を見せて行動させることである。そして、できたら少し大げさなくらいにほめて、モチベーションを上げてあげることである。

 最後に、欧米のグローバル企業を中心にパフォーマンス・マネジメントの見直しが進められ、年度業績評価を無くす事例が、企業人事の話題になっている。そもそも、マネジメントツールと人事考課が持つ役割は異なる。くれぐれも成果主義のように、新しい制度に飛び付くことなく、自社に合うか慎重に検討されることをお勧めする。(完)
   


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