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同一労働同一賃金で働き方は変わるか ・・・ 政府が指針案を公表
 
       
2016年12月23日    今月20日、政府は「働き方改革実現会議」を首相官邸で開き、非正規社員の待遇を改善する「同一労働同一賃金」の実現に向けた指針案(ガイドライン案)を提示した。「同一労働同一賃金」については、これまで労使ともに政策目標(達成すべき目標)として掲げてきているので、反対を唱えることはないが、「何が同一か」を巡っての解釈は一様でない。
 例えば、経済界(榊原経団連会長)は「同じ仕事だから同じ賃金という単純なものではない。日本独自の雇用慣行を踏まえ、将来への期待や、転勤の可能性、役割や会社への貢献などの違いもある」ことを挙げている。こうした発言の背景には、日本企業は欧州のように職務給(職種給)をベースにした「同一労働同一賃金」ではなく、勤続年数(経験年数)に応じて賃金が高くなる職能資格制度に基づく賃金体系(職能給)が一般的であり、そこに「欧州型同一労働同一賃金」を導入しようとすると、現場で混乱を招くので難しいとする考え方がある。
 しかし、職種給が一般的な欧州においても、労働の質や勤続年数、キャリアコースの違いが、「同一労働同一賃金の原則」の例外となる要素として考慮に入れられていることから、日本企業においても「日本型同一労働同一賃金(合理的理由のない不利益取扱い禁止原則)」の導入は可能である。
 何をどのように比較して「同一労働」というのか、その判断や評価はたしかに難しい。だが、非正規雇用であるために賞与や退職金がない、通勤手当も支給されないなど、雇用形態による格差が存在しているのは事実である。様々な格差が存在している雇用現場において、今回の指針案による「同一労働同一賃金」が企業に義務づけられた場合には、どのような対応が想定されるのかなどを整理してみたい。
 
 「日本型同一労働同一賃金」指針案(ガイドライン)のポイント
 今や働き手の4割近くを占める非正規労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)。正社員と同じような仕事をしているのに、待遇は正社員のおよそ6割と見劣り(ドイツ8割、フランス9割)する。正規・非正規の雇用形態に関わらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一賃金の実現に向けて策定されたのが、「同一労働同一賃金指針(ガイドライン)案」である。
 この指針案は、基本給、賞与・諸手当、福利厚生、教育訓練・安全管理の4つについて、いかなる待遇差が不合理であり、いかなる場合は不合理でないのかを具体例で示したものである。ただ、抽象的な表現が目立ち、「問題となる例」として列挙された項目も限られ、格差是正がどう進むかは、今後の法改正の行き方次第の面もある。
 指針案のポイントをいくつか挙げてみよう。
 基本給について、指針は「職業経験や能力」「業績・成果」「勤続年数」の3つの要素に分類している。例えば、非正規で長く働いていても昇給を認めない契約の更新は問題となる。また、入社以降の経験や能力が同じであれば、非正規という理由だけで待遇を正社員より低くしないように求めている。ただ、指針は経験や能力などが同じかどうかの基準を示しておらず、企業が自ら判断することになる。
 また、非正規労働者を対象とする賞与の制度を持つ企業は、全体の3割に留まる。だが、非正規社員に賞与を支払わなかったり、一定の低額(寸志)しか支給しなかった企業は、今後見直しを迫られる可能性がある。さらに、通勤手当や出張旅費、慶弔休暇などでは、待遇差を認めず、正社員か非正社員かの雇用形態にかかわらず「同一の支給・付与をしなければならない」としている。なお、退職金や住宅手当の扱いには触れていない。
 さらに、教育訓練・安全管理については、同一の職務内容である非正規労働者にも同一の教育訓練等を実施しなければならない。また、職務内容や責任に一定の違いがある場合は、その相違に応じた実施が求められている。
 さらに、派遣労働者の待遇は同じ仕事をする派遣先企業の社員と同じにしなければならない。

 現行法と指針案(現行法の法解釈の明確化の位置づけ
 今回、「同一労働同一賃金指針案」が提示され、さっそく産業界からは導入への警戒感の声(人件費の増大を懸念する声が圧倒的に多い)が漏れ聞こえてくる。だが、非正規雇用にかかわる主な労働法制には、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の3つの法律がすでにある。非正規の賃金水準が正規社員の6割という現状が、そもそも違法状態に近いことを理解することからスタートする必要がある。(ただし、賃金格差はこれまで契約自由の範疇の問題として容認される判決が多くだされてきた)
 【労働契約法第20条】有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止している。この禁止の対象となる労働条件には、賃金や労働時間などのほか、災害補償、服務規律、教育訓練、福利厚生など労働者に対する一切の待遇が含まれる。
 【パートタイム労働法9条】短時間労働者であることを理由とした差別的取り扱いを禁止している。禁止の対象には、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用のほか、休憩、休日、休暇、安全衛生、解雇など労働時間以外のすべての待遇に及び、業務内容、責任の程度、人材活用の仕組み(職務内容・配置の変更範囲)および運用が通常の労働者と同一であれば同一の待遇としなければならないとされている。
 【労働者派遣法30・31・40条】派遣労働者と派遣先で同種の業務に従事する労働者の待遇の均衡を図るため、派遣元事業主と派遣先それぞれに対し義務を課している。
 派遣元事業主に対しては、派遣先の労働者との均衡を配慮しながら、賃金の決定、教育訓練及び福利厚生の実施等を行うよう配慮の義務を課している(30条3)。また、派遣労働者の要求に応じて、これら待遇の確保に当って派遣労働者に説明する義務を課している(31条2・2項)。
 派遣先に対しては、派遣先労働者に実施する教育訓練を派遣労働者にも実施すること(40条2項)や福利厚生施設についても派遣労働者にも利用の機会を与えること(同条3項)、派遣労働者の賃金を適切に決できるよう、派遣先労働者の賃金水準に関する情報提供等の措置を講じること(同条5項)、などの配慮義務を課している。
 以上のように現行法においては、「不合理な不利益(格差の設定)」は認められていない。正規・非正規が社会的問題となっているなかで、「職場における公正さの見直し」を迫られているのは事実である。現行の法解釈を明確した指針案が、その処方箋の1つであることは間違いない。

 「同一労働同一賃金」で働き方をどう変えるか
 非正規雇用比率が大きく上昇した結果、かつて正社員だけが行なっていた仕事を非正規社員に任せることが多くなった。また、大企業の男性社員層では雇用の流動性が高まり、大手企業から中小企業へ転職するケースも珍しくなくなった。さらに女性が男性と同様の仕事やポストに就くケースも増えてきた。
 こうした結果、正規・非正規、大企業・中小企業、男性・女性で仕事の世界がオーバーラップするようになり、雇用形態、企業規模、男女のそれぞれの間での「公平性」が問われるようになってきたのである。ここに、今の日本で、就業形態や性別等に関わらず、「同じ仕事であれば同じ賃金を支払うべき」という「同一労働同一賃金」が求められている理由がある。
 現状では、指針案の法的位置づけは不明確ではあるが、指針案が実効性をもち、結果として待遇改善に役立つためには、企業の労使による積極的な取り組みが不可欠であり、その導入にあたっては工夫が必要となる。具体的には、「合理的理由のない不利益はなくす」という考え方で「同一労働同一賃金」を目指すべきである。
 その際に、 峭舁的不利益」をどう定義するか、∪擬勸の賃金(年功)カーブのフラット化にどう対処するか、この2点について、企業は実務的な対応を行う必要がある。
 これまで日本の企業では、長期継続雇用を極力残しつつ、年功賃金のみを是正しようという取り組みが行なわれてきた。成果主義は、賃金制度を属人給から仕事給に転換するという意味において、「同一労働同一賃金」の原則を導入する動きと重なる。
 また、近年はワークライフバランスの観点から、限定正社員(多様な正社員)の導入の必要性が宣伝されてきたが、この限定正社員は「職務型」を想定した働き方であり、そのため非正規社員との間で「同一労働同一賃金」が適用しやすいという特徴がある。ただし、職務型では企業内での人材育成のインセンティブが働きにくくなる。欧米では企業の外に人材育成の仕組みが存在することでこの点を補っているが、日本の企業内教育の仕組みは、日本企業の競争力の源泉でもある。
 そこで、正社員の「職種無限定・高賃金」タイプを基本にしつつ、新たに「職種限定・高賃金」タイプの限定正社員を増やすという「複線型雇用システム」を実現することで、環境の変化に対応しつつ、日本企業の競争力の源泉である「日本的なもの」を堅持する方向を目指していくことを提案したい。また、「同一労働同一賃金」の問題は、単に賃金のあり方を見直すだけでなく、経済社会環境の変化に応じて、雇用制度や関連する人事諸制度の仕組み全般を見直すという人事政策全体のなかに位置づけていくべきテーマだといえる。

 (追記:最近の判例の動向)
 正規社員と非正規社員の待遇格差を問題とする20条裁判は、従前から議論されてきた、古くて新しい問題でもある。
 日本型雇用システムの根幹である「就社型雇用システム(メンバーシップ制)」においては、正規社員はメンバーであり、非正規雇用はメンバーではないため「待遇差があって当然」という、これまで通用してきた考え方が通用しなくなっている(ニヤクコーポレーション事件、ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件等)。
 今後は「正社員」という身分(メンバーシップ)ではなく、働く人の多様性に対応できるように、従事する業務、責任、企業での位置付け(役割)から処遇を決定する新しい雇用システムを模索していく必要がある。そのためには、まず自社の人材ポートフォリオの作成から着手したい。
   


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