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人材格差が企業格差の時代の対応策 ・・・ アトラクト&リテンション
 
       
2016年11月24日    2015年に実施された国勢調査の人口速報値が総務省統計局から発表された。日本の総人口は、10年の前回調査に比べ約94.7万人減少した。国勢調査で総人口が減るのは大正9年の調査開始以来初めてである。人口の減少は国内経済の縮小をもたらし、企業にとっては成長基盤が失われ、成長より利益が優先課題となる。
 それを裏付けるように日本能率協会が今月発表した、2016年の「日本企業の経営課題」でも「収益性の向上」が前回(2014年度)よりも8.9ポイント増加し、第1位に挙げられている。過去10年間の経営課題の主要項目の推移を見ても、「新製品・新サービス・新事業の開発」「事業基盤の強化・再編」の比率が高まっている。このことから売上拡大や収益性向上に向けた具体策が経営課題として認識されていることがうかがえる。
 続いて第2位には、前回調査では第1位だった「人材の強化(採用・育成・多様化への対応)」が順位を入れ替えて挙げられている。人材の強化については、量と質の2つの観点があるが、量(51.1%)より質(74.4%)の不足感の方が大きく上回っている。その背景に、新規事業・イノベーションの成果について、約4割の企業が「成果が出ていない」と回答している。
 総じて、近年の日本企業の雇用システムは、長期雇用を基本的としながらも、従来の集団管理から一人ひとりを強くする個別管理へと転換せざるを得ない状況の中にある。雇用システムの変化は、採用や育成のあり方にも大きな影響を与える。人材難が進み「人材格差」が「企業格差」となってきている現在、いかに自社にとって必要な人材を引き付け、引き留めていくか、アトラクトとリテンション(人材の惹きつけ・引き留め)対策について述べてみたい。
 
 なぜ、アトラクト・リテンションが必要なのか
 厚生労働省は今月25日、平成25年3月に卒業した新規学卒者の卒業3年以内の離職状況を公表した。中学卒業者63.7%(前年比1.6%減)、高校卒業者40.9%(前年比0.9%増)、大学卒業者31.9%(前年比0.4%減)が、卒業後3年以内に離職していることが分かった。いわゆる「七五三現象」は若干の変動はあるが、あまり改善されていないようである。
 すでに団塊世代の大量退職や少子化の進展もあり、企業の採用意欲は依然として高い水準にある。さらに人材の流動化が進み、よりよい仕事や待遇、成長の機会を求めて転職する「自発的転職者」が増えてきているのが最近の傾向である。だが、企業からすると人材の流出である。特に、優秀な人材ほど魅力ある企業への転職を考える。逆に、そうでない社員は魅力のない企業に残るという状況を生み出し、まさに人材の格差が会社の格差を生み出すというのが、人材流動化時代の特徴といわれている。
 いずれにしても、人材の流失により企業が被る損失は小さくないが、社員の流出により会社が被る損失には、どのようなことが考えられるだろうか。
 まず、後任の人材を採用するための直接経費や採用業務に関わるコストに加えて、入社後の教育に対する時間的コスト、間接的コストがかかってくる。また、今日の採用難の下では、辞めてすぐに人が採用できるわけではなく、その間の業務空白による機会損失が発生する。さらに、後任の人が就いたとしても、その人が前任者と同じようなパフォーマンスを発揮できるようになるには、それなりの時間を要するし、一定期間は生産性が低下する。それ以外にも、社員が転職すれば顧客も一緒に新しい会社に移る可能性もあるし、転職者が保有している技術・ノウハウが転職先に流失することも考えられる。さらには、優秀な人材が去ることで、職場のモラールやモチベーションが低下して、職場全体の活力が削がれてしまうのである。
 このように離職による損失の大きさは計りきれないものがあり、優秀な人材が他社に引き抜かれることになれば、企業にとって大きなダメージとなっていく。
 市場のグローバルにより企業間の競争は一段と激しくなっており、ハイ・パフォーマーの争奪戦は当分続くと思われる。その結果、優秀な人材を採用することが困難になり、ますます売り手市場になっていく。だからこそ、自社にとって大切な人材を惹きつけ・流出を防ぐこと(リテンション)が、人事戦略上、極めて大きな問題となってきているのである。

 アトラクト&リテンションとは
 では、人材の流出を防ぐにはどうすればよいだろうか。一般的に、優秀な人材を引き留めておくには、「報酬」が重要であると考えるだろう。しかし、転職する人材の多くは、今以上の報酬だけを求めて転職しているのだろうか。むしろ、仕事のやりがいや専門的スキルが向上できる組織、成長を実感できる職場、充実した福利厚生、ワークライフバランスが実現されている環境など、各人が「働く価値」を見いだせる企業を求めて転職を考えているのではないだろうか。
 優秀人材の定着を試みるリテンション(アトラクト=人材の惹きつけを含む)の具体的な取り組みは、/融・報酬制度の見直しと、⊃場での「キャリア支援活動」の2つである。
 人事・報酬制度は、役割等級制度(Role-based Performance Unit)を中心にして、この報酬制度を適切に進めることを欧米では、「パフォーマンス・マネジメント」と呼んでいる。これは、日本企業の成果主義のように業績や結果ばかりみるのではなく、人材の将来を見据えたキャリア・マネジメントの一貫として位置づけられている。
 また、欧米でのキャリアとは、資格や学歴というより、むしろ成功体験(結果だけでない)であり、成功に導くためのプロセスを重視している。したがって、決められた手順通りに働いているだけの人は、キャリアがあるかどうかは議論の分かれるところである。一般的にキャリアのある人とは、「この人に任せれば、きっと成功に導いてくれる」という安心感があるかどうかであり、決まり切ったワン・パターンの事しか出来ない人ではない。
 新規採用の若者や優秀な人材の定着率を上げるには、「風通しの良い職場づくり」と「若年者を成長させる取り組み」が効果的であり、成果主義の導入や高い賃金とは関係ない。
 参考までに、風通し良い職場とは、「会社が求める人材像が提示されている」「経営者や上司との意見交換が行いやすい」「相談しやすい雰囲気を意識して作っている」などが挙げられる。
 また、若年者を成長させる取り組みには、「キャリア・パスが明示されている」「一人ひとりに目標が設定され、管理がされている」「上司の評価項目に、部下の育成が含まれている」「自己啓発やキャリア・アップのための援助が行われている」などがある。
 つまり、職場が開放的、話しやすい雰囲気で、透明性があり、人材を成長させる仕組みや取り組み、更には、部下の育成能力を評価能力としてキチンと見ているかにかっているのである。

 リテンション対策の具体例
 リテンションに一定の効果があるという理由で、メンタリングプログラムを採用する企業は少なくない。しかし、実際にはメンタリングプログラムを用意するよりも、職場でのコミュニケーションによって、社員の気持ちを汲み取ることのほうが重要である。
 ここで関わってくるのが、会社(リーダー)とメンバーの「交換関係」である。人は相手との相互作用における報酬とコストを比較し、交流による報酬がコストを上回れば、会社に対して魅力を感じるといわれている。
 各企業によって優秀な人材像は異なるし、リテンション対策も異なってくる。各社各様が本来の姿である。ここでは、昨今のさまざまな状況を踏まえた上で、一般的なあり様としてのリテンション対策の考え方を述べてみたい。

1)職責に応じて権限を与え、公正に評価していく
 社員は、どのように仕事を成し遂げたか、そこでの働きぶりを公正に評価されていると実感を得たいものである。そして、権限を与えられると仕事に満足し、組織へのコミットメントも向上していく。
2)働きに応じた報酬
 「人はパンのみに生きるにあらず」といわれるが、「必要条件」として重要な要素であることに変わりはない。短期と長期のインセンティブバランスを考えて、自社なりの工夫をしたい。パフォーマンスの定義は難しいが、実現できれば業績の向上と人材の定着が可能になる。
3)キャリア形成の機会を提供する
 優秀な人材ほど、自らの知識・スキルを向上させてキャリア形成をしたいという思いが強い。それに報いていくには、単なる昇格だけではなく、キャリア・パスをはっきりさせることで社員は安心感を持ち、将来へのロードマップを得ることができる。
4)能力開発の機会を提供する
 優秀な人材は、先端的な知識・情報に触れることをしきりに望む。いろいろな形での教育やトレーニングの機会やツールを提供することは不可欠な要件といえる。提案や新しいアイディアを奨励するが、仕事の量(ジョブサイズ)は達成可能かつ適切であるようにする。
5)頻繁なフィードバックを行う
 機会あるごとにフィードバックを行い、社員の納得感を醸成し、自己認知感を高めることはとても重要である。これによる組織への「帰属意識」効果は大きい。
6)職場のコミュニケーションを促進する
 上司や同僚との「関係の質」は、仕事における「思考の質」や「行動の質」に大きな影響を与える。上司の期待を明確にし、オープンなコミュニケーションをはかり、職場の対人スキルを向上することは人間関係を円滑にするだけでなく、組織への信頼感を高め、離職を減少する。

 今日的なリテンションを考える際、ここで記したようなリテンション対策が整備されているかどうかが重要なポイントとなる。ただし、「職種」や「階層」によってリテンションの要因が異なることを忘れてはならない。だから一度、どのような会社や組織で働いてみたいか、皆で腹を割って話し合ってみてはどうだろうか。
   


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