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過重労働という日本企業の弱点 ・・・ 働き方への疑問
 
       
2016年10月27日    「karoshi(過労死)」が英語になるほど、日本企業の長時間労働の実態はひどい。本来、生活に必要なお金を稼ぐなど、人生を豊かにするはずの労働によって命を奪われてしまうことは絶対にあってはならないことだ。
 先月9月には官邸主導(安倍首相議長)の「働き方改革実現会議」がスタートした。そんな中で日本を代表する広告会社の電通に東京労働局の抜き打ち調査が入った。女性新入社員の過労自殺をきっかけに、違法な長時間労働(月100時間を超える残業)が常態化していたことが表面化し、刑事事件に発展する可能性がでてきた。電通といえば、1991年にも新入社員が自殺し、過労死と認定されて損害賠償命令を受けている(その後の司法判断基準)。また、3年前にも当時30歳の男性社員の病死が今年に入って長時間労働による過労が原因だったとして労災認定されている。経営者や管理職は、そこから何も学んでいないと考えざるを得ない。
 報道を見る限りでは、過労死に至る原因は、長時間労働が大きく関係しているのは間違いないが、上司の精神論(パワハラ)によるところが大きいようだ。「ライバルより長く働け、休むな、疲れた顔をするな」、さらには「俺が若い頃はそうしてきた」。そうした精神論の強要がある限り、労働環境の問題はなくならない。つまり、問題の本質は昔の働き方を引きずった経営者や管理者の意識にある。
 女性社員の登用、高年齢者の活用など、ダイバーシティの推進は待ったなしの状況だが、なかなか進んでいない。長時間労働が当たり前という働き方が続いていては当然のことかもしれない。だが、男性社員が中心の企業文化の中で生産性向上や斬新な発想は生まれるだろうか。
 技術革新のスピードは加速していて、10年後・20年後の働き方は予想しづらい状況だが、まずは目先の幸せな働き方を探る姿勢を持ちたい。では、何から始めたらいいのか。新しい時代の働き方について考えてみたい。
 
 長時間労働の2つのタイプと社員のエンゲージメント
 長時間労働には2つのタイプがある。1つは、「自発型」であり、もう1つは「非自発型」である。「自分の仕事は、最後まで責任を持って全うする」とし、結果として長時間労働になってしまうのが自発型である。それに対して、「周りに迷惑がかかるから」「評価に影響し、将来が心配だから」といって、不安(個人を精神的に追い込む同調圧力)を払拭するためにがむしゃらに長時間働いてしまうのが非自発型である。
 日本人の働き方に関して非常に大きな問題の1つは、諸外国と比べて非自発型が多いことだといわれている。働くことにまつわるもろもろの不安を払拭するために依存的に長時間働き、その結果、心身の健康を崩してしまう。そのことが世界的に見ても特殊だといわれている。
 過去に米国人事コンサルタント会社のケネクサ社が実施した「社員エンゲージメント指数」調査で(28カ国)、日本の社員はダントツの最下位であった。エンゲージメントの高い社員は企業に留まる傾向が高く、さらに企業と顧客に対してより優れたサービスを提供する。ここで重要なのは、そのような社員は、仕事に対するやる気が非常に高いことである。このような社員が、顧客との関係を深め、企業の製品やサービスを刷新し向上の原動力となる。
 逆に、エンゲージメントの低い社員は、やる気がなく、仕事への関心がなく、必要最低限のことしかしない。このような社員は、欠勤が多く、事故を起こしたり、品質問題を発生させたり、顧客を遠ざけたりする原因となる。また、消極的な態度で周囲のモラールを低下させる原因にもなる。その他のエンゲージメントの調査を行っている会社も、似たような結果を示している。
 日本企業では長年、コストダウンを理由に長時間働かせて給与を抑えてきた。会社の利益が上がっても社員への還元は少ない。また、同じく節約のため非正規社員を計画もなく大量に利用している。これが日本の経済全体に悪影響を与え、社員の士気を低下させている。また、社員は仕事に不満があっても辞めることができず、企業は社員の満足度をあまり重視しない。自分の仕事に情熱を傾けられない人からは優れた成果は期待できない。個人のスキルや関心にあった仕事を与え、そこから彼・彼女らが達成感を得られるよう日本の企業はもっと努力する必要がある。

 長時間労働と労働生産性
 続いて労働生産性についても見てみよう。近年は、ワークライフバランスや効率的な働き方を推進する上でも、より短い時間で効率的に仕事を行い、時間当たり労働生産性を向上することが重視されるようになってきた。
 2014年の日本の就業1時間当たり労働生産性(米ドル、購買力換算)は41.3ドル(21位)、OECD平均(34カ国)が48.8ドル、米国が66.3ドルとなっている。つまり、2014年の日本の生産性は米国の62.3%、OECD全体の84.6%しかないことを意味する。この数値は、日本企業の社員は他国の社員と比較して、時間を生産的または効果的に使っていないことを示唆している。
 確かに、世界的に見ても日本の労働者の教育レベル、勤勉さ、そして忍耐力のレベルは相当高い。しかし、日本の企業はせっかくの優秀な労働力を非常に非効率に使っていることになる。むしろ「無駄使い」といっても過言ではない。今でも日本の工場管理方法(モノづくり)が優れていることは世界でも知られている。
 だが、現代は品質の高い商品を作るだけでなく、顧客が望んでいる商品、付加価値の大きいイノベーション性のある商品が求められている。それを可能にするのはモノづくりの生産現場だけでなく、研究開発、マーケティング、商品開発、などのホワイトカラーの人材だ。
 それにもかかわらず、日本の企業は生産現場以外の人材を管理するための革新的な方法を生み出していない。実際のところ、諸外国と比べても人材の管理や人材活用のための取り組みは遅れている。それどころか最近では、今回の電通でもみられたように上司のパワハラが問題になっている。一方的に怒鳴ったり極度に厳しい態度をとる上司を持つ部下は、仕事が楽しいはずもなく、ストレスだけが上昇し、モチベーションが下がり、生産性も向上しないのはいうまでもない。
 そもそも日本の職場は男性正社員を前提に雇用管理が作られている。しかし、それ以外の女性社員や非正規・派遣社員などの人材には補佐的な仕事をさせ、その才能を十分に活かす職場体制になっていないことが多い。これらの多様な人材の可能性をもっと引き出せれば職場全体の労働生産性の向上に繋がるはずだ。硬直した「仕事」と「雇用」の考え方から脱却する必要がある。

 日本の労働時間実態と海外の労働時間規制
 ホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間規制適用免除制度)など、労働時間の規制緩和を提言する政府は、日本の労働時間が1800時間を切って1700時間台になったと喧伝している。年間1800時間というと、「週40時間、残業無し、完全週休2日、年次有給休暇完全取得」という働き方になる。日本の実態とは全く異なる。特に正社員を中心にして長時間労働は変わっていない。1800時間はパート労働者を含めた平均労働時間であり、正社員の労働時間の実態を示してはいない。(厚労省「毎勤統計」にはサービス残業は含まれていない)
 これとは別に、総務省統計局の「労働力調査」では、全国で約4万世帯の約10万人に聞き取りをして、平均週間就業時間を発表している。これは、月末1週間の労働時間を調査員が直接聞き取るもので、正確ではないが大雑把な労働時間の実態を示している。(1年が52.14週だから、52倍すると年間労働時間となる)
 要するに、2014年度の男性社員(正規社員と非正規社員)は平均して2300時間を超えて働いている。勿論、正社員はこれ以上に働いていることになる。政府の「働き方改革実現会議」では、残業の上限がほぼ青天井になっている36協定を問題視し、これに上限を設け、上限を超えた事業所には罰則を設けるという提言が予想される。では、望ましい労働時間規制を考えるために、諸外国の制度を眺めてみよう。
 米国では週40時間を超える労働に50%の割増賃金の適用を義務づける間接規制をとっている。一方、ヨーロッパでは週平均で48時間を超えないといった、労働時間を直接規制している国が多い。さらに勤務と勤務の間に、最低連続11時間の休息期間をとらなければならないという勤務インターバル規制を行っている。
 また、ヨーロッパでは、超過した労働時間にはペナルティとして割増賃金を払うという考えから休日に代替する考え方が強まっている。たとえばドイツでは割増賃金による規制を1990年代にやめて「労働時間貯蓄制度」を導入した。労働者が労働時間口座に所定外労働時間を貯蓄し、休暇などに使える仕組みで、オランダやベルギー、北欧諸国などでも導入されている。残業した分は割増賃金ではなく休暇にすれば、残業代を稼ぐために長時間労働をする動機がなくなり、残業代を払いたくないという企業側の本音にも合致する。
 さらに、日本では年次有給休暇の取得率が低いという問題があるが、ヨーロッパの労働者が有休を取れるのは企業に対して事実上の消化義務を課しているからである。また、ヨーロッパの有給休暇制度の注目すべき点として「連続性」があげられる。労働者の個人的な都合で休暇を分割する必要がないかぎり、連続して与えなければならないと規定されている。日本では有休消化率は50%程度にとどまり、病気欠勤を有休消化で代替することも珍しくないが、有給休暇と別個に病気休暇が設けられていることも、日本と対照的である。
 ヨーロッパでも変形労働時間・裁量労働のような形で、労働時間の弾力化が進められているが、前述した三つの柱(労働時間規制、インターバル規制、有給休暇取得規制)が歯止めとして機能しているため、実労働時間が延びるという事態にはつながっていないのである。そして、こうした規制は、組織率の高い労働組合と労働基準監督署(監督官の数は日本の数倍以上)によって担保されている。
 日本の長時間労働をなくしていくには、各人の「職務の明確さ」と企業内コーディネーションを必要としない「職務設計の見直し」が必要になると思われる。
   


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