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日本企業の強みを再生する ・・・ 組織コミットメント
 
       
2016年9月24日    リオ五輪、陸上男子400メートルリレーで、日本チームが銀メダルを獲得した。100m9秒台が1人もいないチームが、オリンピックという最高の舞台で世界に衝撃を与えた。勝因はバトンパスにあったといわれているが、4人のチームメートが信頼しあった、チームワークの勝利である。潜在的な走力能力が高いチームだからといって、チームとしてのパフォーマンスが高いとは限らない。たとえスター選手のような高い個人技がなくても、まとまりよく連携しあえば、優れた戦果をもたらすことを日本代表チーム4名が証明したのである。
 かつての日本企業の特徴や強みを語るうえでも、これまで繰り返し指摘されてきたのは、現場や中間管理職のコミットメント(組織への愛着心・忠誠心・連帯感)の高さである。社員の組織へのコミットメントが高ければ、職場小集団のQC活動に代表されるように、与えられた仕事の枠を超えて職場の改善に知恵を使うことが自然と起きる。企業は社員に対して安心して人材投資が可能となる。社員もまた、別の仕事や他の企業への転職を考えないから、組織・仕事への愛着が高まり、また積極的に企業に対して先行的な個人投資を行うようになる。
 ジェームス・アベグレン氏(「日本の経営」1958年)が戦後の日本企業の発展の源泉として指摘したのは、「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」の「三種の神器」そのものではなく、それらによって培われた社員の企業に対する信頼、つまり働く人々と職場との生涯にわたる連帯感にその強調点があった。
 とはいえ、日本企業の特徴であり強みとされてきた組織コミットメントは、90年代初頭の急激な企業収益力の低下を契機として衰退してきている。今日、「愛社精神」や「会社への忠誠心」という言葉は聞かなくなったし、むしろ視野狭窄の「会社人間」を想起させる表現となった。
 確かに、非正規社員の拡大、労働力の外部化、成果主義人事制度の普及など日本的労働慣行は大きく変わった。だが、それらは労働コストの柔軟化がねらいであり、組織コミットメントに依拠してきたマネジメントからの転換を図ったものではない。現在も中核社員については長期雇用を維持しようとしている点を考えると、日本企業は組織コミットメントの再生を志向しているといえる。そこで、今後の組織コミットメント再生の方向について考えてみたい。
 
 なぜ日本的雇用慣行は変化したのか
 多くの日本企業は、バブル崩壊とそれに続く低成長、長期不況、金融危機を乗り切るために、株主重視のコーポレート・ガバナンス(企業統治)と人材マネジメントの改革という2つの制度改革に迫られた。それまでの日本的雇用慣行を資金面と経営意思決定の両面で支えていたのがメインバンク制である。これによって企業は、株主の短期利益の追求を抑制し、同時に長期的視点による経営を可能にしてきた。
 ところが、1997年の金融危機により金融機関と銀行の持株比率は急落し、同時に株主持合比率も下降して、日本雇用慣行を下支えしていたメインバンク制は衰退していった。これに代わって外国人持株比率や個人持株比率が増加したが、これらの株主にとって重要なのは、株価の上昇であって社員の繁栄ではない。つまり、日本企業にとっては「初めて市場の評価や投資家の評価にさらされ、株主支配や敵対的企業買収の脅威」を意識することになったのである。
 また、97年の金融危機から2001年のITバブル崩壊に至る企業収益の急落は、同一業種での企業間の業績格差を生み出し、企業の競争力が厳しく問われることとなった。
 こうして前者は、株主価値重視のガバナンスと人材マネジメントの改革を促し、後者は競争力の構築、企業価値創造のためのガバナンスと人材マネジメント改革を促すこととなった。その改革の方向は、労働コストの柔軟化による収益確保であり、その結果が非正規雇用の拡大と雇用リストラであった。また、競争力構築で目指したのがパフォーマンスの向上であり、それの実現を期待して導入されたのが成果主義人事なのである。
 以上から、日本雇用慣行の変化は「長期雇用の維持(中核社員の長期雇用)」と「成果主義の導入(個々人の業績向上)」という流れのなかにあり、組織コミットメントに依拠しないマネジメントへの転換を図ったものではない。むしろ、組織コミットメントの減退は日本企業が予期できなかったところであって、現在も組織コミットメントの醸成(職場の活性化)を企業は志向しているのである。

 組織コミットメントの定義と規定要因
 まず、議論の混乱を回避するために「組織コミットメントの定義」について整理しておこう。組織コミットメントとは、社員と組織の関係性(心理的距離)を測る概念であり、日本を含めて世界的にも膨大な研究がなされてきた分野である。それだけに研究者によって様々な定義がなされ、概念化も多様になされてきた。
 日本では、組織コミットメントを組織のために個人が犠牲になる「滅私奉公的」な意味や盲目的または義務的な「忠誠心」の意味で捉える傾向がある。しかし、米国での研究は、個人と企業の交換関係から成立する「社員と組織の結合」といったような捉え方をしている。また、組織コミットメントは、組織への適応といったプロセスを経て、長い時間をかけて形成されるものであって、短時間には変化しないものとされている(モチベーションとの違い)。したがって、主に正規社員のコア人材を前提としている。パートタイマーなど非正規社員の組織コミットメントは、別に考えなければならない。
 人間には誰しも情緒的(喜怒哀楽)側面と功利的(行為利益)側面の両面を持っている。コミットメントもまた情緒的側面(情緒的コミットメント:Affective Commitment)と功利的側面(功利的コミットメント:Continuance Commitment)がある。「情緒的コミットメント」とは、自分の個人的価値を組織の価値と同一視し、両者が一体不可分であると感じる程度に注目した概念である。これに対して、「功利的コミットメント」とは、個人と組織の経済的な交換関係に注目したコミットメント概念である。経済的な利得計算をもって高まるコミットメントがそれに当たる。
 一般的にコミットメントの規定要因には、所属する組織の勤続年数、特定の仕事の従事年数、他の組織や仕事への転職可能性、仕事や組織の専門性の高さなどが挙げられる。つまり、特定の仕事や組織への勤続年数が長くなれば、その仕事や組織へのコミットメントは高くなり、逆に転職機会が開かれ、容易であれば、現在所属する組織や仕事へのコミットメントは相対的に低くなる。また、仕事の専門性が高く、組織の社会的威信が高く、容易に他人が代替できない仕事や組織であれば、キャリアに対するコミットメントは高くなるといわれている。
 したがって高度成長期は、長期的な雇用の保障が、高いコミットメントを引き出す前提となっていた。雇用が保障されるからこそ社員は会社にコミットし、コミットするからこそ雇用保障の経済合理性がさらに担保されるという好循環が機能していた。しかし、前述した株主重視のガバナンスと人材マネジメントの改革の過程で、長期的雇用が保障される可能性は大きく低下し、その結果として、個人の組織に対する信頼や帰属意識は低下し、よりドライなものとなっている。

 なぜ組織コミットメントは減退したのか
 なぜ個人と企業はドライな関係(コミットメントの減退)になったのだろうか。その代表的なものとして「心理的契約(長期雇用、年功昇進、年功賃金等)の不履行」があげられる。心理的契約の不履行とは、企業が社員の期待に反して長期雇用契約を果たし損ねたという社員の知覚(感知)である。ここで重要なことは、契約が明文化されたものを指すのではなく、明示的・暗黙的に形成されている知覚という点である。つまり、企業が不履行という自覚がなくても、社員がそのように知覚している場合、心理的契約は不履行となる。この説明は非常に明瞭であり、論理的な矛盾もないようである。
 しかし、この説明で十分といえるだろうか。社員は日本的雇用慣行の変化を受け入れ、これに適応して組織との関係を心理的契約(情緒的コミットメント)から取引的契約(功利的コミットメント)に変化させ、その結果、組織コミットメントが減退しているのだろうか。そもそも雇用慣行は、企業の一方的な意向だけでは規定されない。なぜなら、企業が必要な人材を確保し、長期的に存続していくためには、働く側にとって魅力がなければならないし、それが人材マネジメントの前提条件だからである。
 結論からいえば、「自らのことは、自ら決めねばならない」という働く側の意識変化である。とりわけ現代の若者は「やりたいこと」を重視する労働観・価値観が形成され、それは社会的に規定されていた従来の労働観や価値観が否定され、自ら決める、自ら責任を負うという「自己判断」と「自己責任」の労働観が醸成されたのである。一方で日本的雇用慣行が変化し、もう一方で社員側の意識変化があり、それらが相互に関わることで組織コミットメントの減退につながっていると考えられるのである。

 新たな組織コミットメントの方向
 終身雇用・年功制の瓦解、雇用の多様化等によって、組織文化や一体感は希薄化した。個人のキャリア意識が台頭し、会社のために働くのではなく、自己の成長・キャリアアップのために働くという考え方が支配的になってきた。さらにダイバーシティ、ワークライフバランスという潮流に対応した施策の影響もあって、多くの企業が保有していた同質性は失われてきている。そして、このような一連の変化に伴って社員の組織コミットメントは急激に低下したと指摘する声も多い。
 こうした状況を打開するために、コミュニティを再生し帰属意識を高めようとする動きもある。「従業員満足」「働きやすい会社」への関心、若年キャリアにおける成果主義の見直しなど、過去の施策を否定し、失ったものを取り戻そうとする企業が増えている。「働きがいのある会社」という語句への注目はそのいい例である。
 しかし、その満足とはなんだろうか。働きがいとは、何だろうか。今、働く個人が望んでいるのはどのような状態、どのような関係なのだろうか。我を忘れて仕事に長時間没頭することを、多くの人が求めているのだろうか。企業人である前に、まず生活人として自立し、その上で企業との「いい関係」を作る。それが現代という時代の要請であり、個人も企業も目指すべきものだろう。男性・正社員を中心としたムラ社会に変わる新たな雇用制度の確立と人材マネジメントの実践が喫緊の経営課題ではないだろうか。
   


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