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人々が幸せになれないグローバリゼーション・・・ディーセント・ワーク(機
 
       
2016年5月26日    2016年春闘の回答集計(連合:4月12日時点)では、額で6,072円(定期昇給相当分を含む)、率では2.06%となり、前年同時期(4月14日)に比べて、額で593円、率で0.18ポイントそれぞれ下回っている。そのうち、300人未満の組合をみると、賃上げ額は4,715円、率は1.91%となっている。
 今年の春闘を取り巻く環境をみると、失業率は低く、労働需給はタイトな状態にあり、有効求人倍率など、一部の指標はバブル期並みに改善し、企業業績の改善も続いている。企業全体の利益動向をみても、2014年度に過去最高益を更新し、今年度はさらにそれを上回る利益を獲得できる見込みである。このように、賃金にとって、上昇しやすい条件が整っていた。
 それでは、大幅な賃上げが実現できたかというと、どうも、そうではなさそうだ。デフレ脱却を目指す安倍政権が誕生して3年が経った。この間、雇用情勢と企業業績が改善してきた。しかし、賃金の上昇は鈍いままだ。このため、新政権への期待感もあって堅調に増加した消費は、徐々にその勢いが弱まっている。
 ところで、なぜ、企業業績が好調なのに賃金は上がらないのか。過去2年間の春闘では、賃上げが約束されていたはずだ。だが、労働者1人あたりの賃金の伸び率をみると、2014年度にはプラス0.5%と4年ぶりに増加に転じたが、その伸びは低く、2015年度に入っても伸びは高まっていない。これには、いくつかの理由が考えられるが「底辺をめざす競争」といわれる、グローバリゼーションの経済システムが考えられる。
 市場原理主義的なワシントン・コンセンサスともいわれるグローバル経済は、各国の経済成長を進めるうえで、大きな利益と発展をもたらした。しかし、その一方で、激しい競争のため、労働者権利の軽視や所得格差の拡大、失業率の増加など、労働者にとって深刻な問題を多く残す結果となっている。およそ、どんなシステムにもプラスとマイナスの両面がある。プラスの面だけを押し出すと、その分だけマイナス面も大きくなる。
 「グローバリゼーションは、世界の人々の生活を向上させるものではない」。近年、このような悲観的な見方が有力になってきている。21世紀のILO(国際労働機関)の目標「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」について考えてみたい。
 
 グローバリゼーションの光と影
 いま日本では非正規雇用の問題だけでなく、正規雇用を含めて様々な厳しい問題が起きている。「成長戦略」に基づく、雇用・労働分野の規制改革である。「雇用・労働規制を緩和しないと、日本の企業は海外に出ていかざるをえないのではないか、だから規制緩和を進める」という意見が強く出されている。主に企業や経済界からこのような意見が多く出されている。こうした意見には2つの意味が含まれている
 1つは、日本の企業が国内で生産を続けてグローバルに競争するには、生産コスト・労働コストを可能な限り低くしなければならない。そのためには非正規による柔軟な雇用・労働を活用しなければならない、ということである。もう一つは、そうした企業にとっては、現在国内で行っている生産活動は、日本以外の国でもできるということである。したがって、日本より賃金水準の低い海外に出ていくということになる。つまり、日本の賃金水準はアジア諸国の低い賃金水準が比較対象となる。
 経済学では、企業の目的は「利潤の最大化である」と定義されている。そうした企業の目的からしたら、雇用・労働分野の規制緩和に関する主張はよく理解できる。日本企業だからといって、国内の雇用維持は優先的な目標ではないのである。では、非正規雇用で低い賃金で人を働かせるはやむをえないのか、国内の雇用を維持するためには不安定な非正規の雇用形態や劣悪な労働条件(長時間労働等)もやむをえないということになるのだろうか。いま働く者、一人ひとりが考えなければならない問題である。
 他方で、「非正規であっても、まともに生活がおくれないような低い賃金水準の雇用は許されない」といった考え方がある。いわゆる「同一価値労働・同一賃金(均等待遇)」の原則である。日本の平均的な社会生活は、正規雇用の賃金水準を基準に形成されてきたことを考えれば、その半分程度では、まともな生活ができないというのは当然のことである。それでも国際競争のために賃金コストを抑制する必要がある、引き下げる必要があるという状態を放置してよいのだろうか。すでに広範な貧困が存在しているし、それがさらに拡大する可能性がある。

 世界の人々を幸せにしないグローバリゼーション
 グローバリゼーションの光と影に触れたが、この問題について現時点では正解は存在していない。社会で働く誰もが納得できる正解はおそらくない。ただし、企業の生産コストは賃金だけではない。また、様々な製造業が国内で生産活動を続ける理由には、生産コストだけでなく、それ以外の問題もある。
 グローバリゼーションという言葉が頻繁に使われるようになったのは、80年代中頃からだと思うが、その時代に何か大きな変化があったものと考えられる。その変化を掴めば、「なぜ、グローバリゼーションが生じたのか」「グローバリゼーションは、どこに向かうのか」ということを推測することができる。私見ではあるが、これからますます世界はグローバリゼーションの時代に入り、日本の内部で生産と消費を完結させる経済はとても想定できない。もはや日本の経済や生活は、グローバルな世界に組み込まれているといってよい。問題は、グローバリゼーションの本拠地とされるアメリカ主導のグローバリゼーション(ネオ・リベラル=新自由主義)をそのまま受け入れなければならないかどうかという点にある。
 80年代以降、国境を越えて世界中にモノとカネが自由に行き交うようになった、今日の市場原理主義的(人為的)なグローバリゼーションは、様々な問題が見えてきている。その一つとして、環境汚染の問題が起きている。現在のグローバル市場は、地球環境を保全するというインセンティブを内蔵していない。二つ目に、世界の貧困問題について、現在のグローバリゼーションは解決する方向には働いていない(80年代以降、産業や公共インフラのための投資額が減少している)。こうした貧困の問題は、貧しい国がさらに貧しくなるだけではない。先進国内部においても、グローバリゼーションの過程で大きな問題が発生している。80年代から90年代に先進国の多くで失業率が上がった。失業率が高まると同時に、非正規雇用の割合も増大している。その結果、先進国の「富」は相対的に拡大しているが、雇用労働者の所得はほとんどの国であまり伸びていない。日本も10年くらい雇用労働者の平均所得は低下している。
 このように、現在のグローバリゼーションは最貧国の人達を苦しめるだけでなく、先進国の人達も苦しめているという状況にある。

 グローバリゼーションで進む格差への対応
 先進国の企業は(特に、多国籍企業)、実は儲かっているところが多く、大企業の内部留保は膨らんでいる。日本企業の手元資金も増加しており、1980年以降最も大きな金額になっている。財務省の「2014年法人企業統計」で民間非金融法人企業における利益剰余金は354兆円(対前年度26兆円、8%増)を越えている。それでもなお経済界は、法人税減税や規制緩和などの環境整備を政府に要求している。
 このようにみると、グローバリゼーションの時代というのは、モノやカネが世界中を飛び回るようになったという話だけでなく、先進国、新興国、途上国、最貧国の間の格差が拡大し、それぞれの国の内部の所得格差も拡大したという点で、国際的・国内的な不平等化が進んだ時代、あるいは進んでいる時代といえる。こうした状況に対して、ここ数年、グローバリゼーション反対の運動が国際的に盛り上がってきている。グローバリゼーションのあり方を変えなければいけないという議論が、国際的な様々な機関などでも真剣に議論されているのはそのためである。その中心となっているのが、ILO(国際労働機関)である。
 「グローバルな世界が実現すると、ゆくゆくは豊かな国と貧しい国の所得は均等化して、ハッピーになれる。だから自由主義の市場にしよう」といった議論があるが、現在のグローバリゼーションはそういう結果を生んでいない。むしろ貧困地域の状況は悪化している。
 まとめると、現在グローバリゼーションが急速に進み、将来的にも進むことが予測されるが、これにどう対応するか、よりよいグローバリゼーションのあり方を見出していこうということである。つまり、グローバリゼーションは、世界の人々の協働がつなぎ合わされて、各国の社会生活が成り立つように市場が作られているということである。しかし、そういう世界的な協業システムをマネジメントしているのは「利潤の最大化」を目的とする企業である。利潤動機で活動している企業の協働システムも全体としては、資本主義的経済システムに担われている。
 企業内で働く個人は、協働でお互いが助け合って、世界の人々が必要なものを作り、生活をより豊かにしようとしているが、その反面でその労働をつなぎ合わせている企業のシステムは、必ずしも人々の幸せを目的としているわけではない。グローバリゼーションは、一方で人々が助け合うシステムではあるが、他面でそういう人々の労働のあり方(ディーセント・ワーク:働きがいのある人間らしい仕事)とか、生活のあり方を良くしようということを目的にしていないシステムである。ここから、多様な問題が起きてくることになる。
 09年10月に初めて日本政府が自ら算出・発表したわが国の相対的貧困率は15.7%、OECD加盟30ヵ国中ワースト4位だった。年収200万円以下の給与所得者は1000万人を超えているともいわれ、その一方で過重労働や長時間勤務の問題は、世論の強い批判にもかかわらず、遅々として改善されていないのが現実である。
 ILOでは国際労働法として約200本の条約を採択しているが、そのうち日本が批准しているのは4分の1に過ぎない(わずか48本)。とりわけ労働時間や休暇に関連する条約には一本も批准していない。最低賃金の相対水準(その国の平均賃金と比べてどれくらい低いか)も、先進国中最も低いレベルである。少子高齢化で労働力人口が減少する時代を迎えて、雇用の質や労働条件をもっと人間的なものにしようという、もう1つのグローバリゼーション(ディーセント・ワーク)の動きについて次回は考えてみたい。
   


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