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世界の雇用ルールをどこまで実現できるか・・・同一価値労働・同一賃金
 
       
2016年3月27日    2016年春闘は今月16日、主要企業が一斉に回答を示した。安倍首相が民間企業に賃上げを求める「官製春闘」3年目だが、肝心の企業業績は円高や世界経済の減速懸念などを背景に、ベア(ベース・アップ)は昨年の妥結額を割り込む回答が相次いだ。
 もともと16年春闘では、組合側は経営環境の厳しさに配慮して、前年を下回るベア要求にとどめ、非正規社員の待遇など格差是正を主要テーマに掲げている。非正規社員の雇用比率が4割を占めるなか、経営側も非正規社員の処遇を改善しようという姿勢が目立っている。労使共に、ようやく低賃金の非正規雇用の増加が個人消費の低迷を招き、景気回復の阻害となっていることを認識しはじめたようである。
 厚生労働省(賃金構造基本統計調査)によると、2015年度の所定内給与(残業代を除く)は全体の6割を占める正規社員が321,100円であるのに対し、4割の非正規社員は205,100円である。正規社員(フルタイム労働者)とパート社員(パートタイム労働者)の賃金水準を国際比較すると、フルタイムを100とした場合、日本のパートタイムが56.8%であるのに対して、フランス=89.1%、スウェーデン=83.1%、デンマーク=81.1%、ドイツ=79.3%、オランダ=78.3%、イタリア=70.8%、イギリス=70.8%となっている。(「データブック国際比較」JILPT) このように、「同一価値労働・同一賃金」が定着している欧州と比べて、日本の正規と非正規の賃金格差は、労働者の基本的人権が問われるくらい大きい。
 「ニッポン一億総活躍プラン」を提唱する安倍政権は、同一価値労働・同一賃金の実現に向けた有識者検討会の初会合を今月23日に開き、法制化に強い意欲を示している。女性や高齢者の活躍推進に本気に取り組むなら、労働市場改革は避けられない。しかし、欧米のように職務を基準とする賃金制度が確立されていないわが国では、「正社員制度」の弊害を見直すなど、越えなければならないハードルはかなり高い。

 職務給と職能給と同一労働・同一賃金
 「同じ仕事の人なら、同じ賃金をもらう」という均等処遇は、「職務」という目にみえるはっきりしたものを処遇基準(職務給)とすることで可能になる。つまり、職務が上昇(職務昇進)しない限り、たとえ勤続が伸びようと能力が高まろうと、等級も肩書きも、したがって賃金も上昇することはない。賃率(単位時間当たりの賃金額)もシングルレート(単一賃金)か、レンジレート(範囲賃金)だとしてもその幅はきわめて小さい。したがって、高齢化が進むなかで、ポスト不足や人件費コストの増大に悩む日本企業にとって、職務給はそれらに対してスッパリと合理的解決をはかってくれる。
 他方、日本企業の多くが取り入れている職能給は、職務遂行能力というとらえどころのないものを処遇基準とすることから、勤続(習熟度)が伸びれば能力も高まるものだという認識が支配的となり、ともすると勤続に応じて等級も役職も上昇しがちとなる。したがって、中間職能等級の滞留者が増大し、その処遇が問題となり、賃金を上げるため昇格をやむなくするという事情がおこりがちである。
 このように職務給に比べ、職能給ははるかに年功色が強いし、実際に導入された大半の企業の職能資格制度も、年功的運用に堕ちるという傾向が強かった。しかし、このような職能給の中間的性格(処遇基準が明確でない)それ自体が、雇用差別と批判される恐れがある。例えば、国際的な雇用ルールでは、性別や人種や年齢などを基準とした賃金は「差別」とみなされることはよく聞く。今後は日本でも、「正規・非正規」という雇用身分を基準とする賃金は、差別と判断される傾向は強くなってこよう。
 
 同一労働・同一賃金から同一価値労働・同一賃金へ
 労働者の性別・年齢・人種などの違いにかかわりなく、同じ質と量の労働に対しては同一賃金を支払うべきであるという「同一労働・同一賃金」の原則は、歴史的には19世紀末のイギリス産業革命における労働力の増大、とりわけ女性労働者に対する低賃金差別を是正するための運動が起源である。その後、労働者間の属性差異を利用した差別賃金が、労働者全体の賃金水準の低下につながることが自覚され、男女間にとどまらず、年齢、人種などにまで拡大され、1919年に国際労働憲章(ベルサイユ条約)に、そして1951年にはILO(国際労働機構)100号条約として具体化され、国際的な原則として確立されるに至った。わが国でも、1967年に佐藤内閣で批准している。
 しかし、さまざまな理由をつけた賃金差別は依然として根強く残っている。職務給は、しばしば、この原則に沿ったもののようにいわれるが、例えば職域に「性別職務分離(男性職務・女性職務など)」が存在するもとでは男女の賃金格差の是正にはつながらない。正規・非正規の雇用身分による賃金格差もこれと同様のことがいえる。
 1970年代以降は欧米を中心に、これまでの「同一労働・同一賃金」にかわって「同一価値労働・同一賃金」(コンパラブルワース)の要求が登場し、法制化する国が増えている。これは、職種の違いを超えて技能・熟練の程度・責任などの点で同等の価値(値段)をもつと評価された仕事には同等の賃金を支払うことを求める考え方である。日本企業においても、成果主義の1つの賃金体系(バンド型賃金)として関心が高まってきているが、前提となる職務評価の客観性をどのように確立するかなど検討すべき点(性別偏見を排除した職務分析・職務評価の実施など)も多く、なお評価が分かれている。
 欧米における賃金差別の原因には、「性別職務分離」と「職務価値評価における性別偏見」の二つがあるが、「同一価値労働・同一賃金」の原則は後者についてのみの主張である。前者の「性別職務分離」を解消するには、男女混合職化の推進が有効であるが、現状はそこまでに至ってはいない。加えて、「同一価値労働・同一賃金」の原則は「比例価値労働・比例賃金」原則と同義である。つまり、職務価値の異なる分だけ賃金が異なるということである。果たして、わが国の正社員とフルタイムパート社員の賃金格差を職務価値の違いとして、どこまで説明することができるだろうか。

 同一価値労働・同一賃金を可能にする職務評価
 ここまで「同一価値労働・同一賃金」の原則について触れてきたが、職務の価値をどのように測定するか(職務評価)、その測定の方法は何か(職務評価の方法)、ということが重要なポイントであることがわかる。
 職務評価とは、一つの企業または組織にある個々の職務の相対的な価値序列を決める一連の組織的な手段・方法である。職務評価の方法には、序列法、分類法、点数法、要素比較法という四つの基本的な方法がある。序列法と分類法は、各職務そのものを全体としてとらえ、職務同士を総合的な観点から相互に比較する非分析的方法であるため、個人的主観の介入や職務ではなく担当者を評価してしまう恐れが残っている。そのため、イギリスの同一賃金法では労働者からの異議申し立てが認められている。したがって、今日欧米において最も広く使われているのが点数法と要素比較法を合体させた「得点要素法」が世界的に広く活用されている。
 「得点要素法」によって職務評価を行う場合の一般的手順を示すと、/μ撹床舛陵彖覗定(「知識・技能」「肉体的・精神的負荷」「責任の程度」「労働環境」の四要素に区分されることが多い)、⇒彖任瓦箸防床噌猝棔瞥彖覇睛討犯楼蓮砲鮴瀋蝓↓I床噌猝椶瓦箸離ΕДぅ叛瀋蝓壁床噌猝椶僚鼎気療拗腓い鮗┐后法↓たμ海悗稜枦澄壁床噌猝槓魅ΕДぅ箸亡陲鼎い導匿μ海貌静世鯒枴)をして終了する。また、,らまでの制度設計には裁量幅があり、それがどう設計されるかによって職務評価の得点や賃金額が左右されるだけに、制度の納得性を高めるためにも労使の参加・協力を必須としている。
 ところでILOは1990年代から現在まで、日本国がILO100号条約(同一価値労働・同一賃金)に違反していると、異例の厳しい批判を継続している。すなわち、日本企業は職務分析・職務評価を行わず、属人基準賃金(年功給、職能給)であることを批判しているのである。グローバル人材を確保していくうえでも、国際的な雇用ルールの確立が望まれている。

 職能型人事から職務型人事制度へ
 同一価値労働・同一賃金の原則は、正規社員と非正規社員間の問題だけではない。すでに役割や職務といった「仕事基準」の人事制度にシフトした企業も少なくないが、社会・経済の変化とグローバル展開を視野に入れると、さらに職務をベースとした人事・賃金制度を充実していく必要がある。
 職務型人事・賃金制度を導入する利点は、経営戦略・事業計画を踏まえた組織体制(デザイン)・役割分担(人材活用)と賃金・処遇を一体化できることである。この仕組みに人材適性の見極めと配置(リーダー人材の育成と後継者育成計画)を組み合わせていくことで「適所適材」が実現できる。これは、〇埔豢チ茲望,弔燭瓩虜播な組織・職務体制とは、各職務には誰を配置し、どのような報酬で報いるか、将来のために誰を育成し、どのようなキャリアを積ませるか、を毎年検討し実行することでもある。つまり、タレント・マネジメントの実践である。(人に職務を就ける「適材適所」には、変化への対応という面で限界がある)
 職務型人事・賃金制度では、経営の意図を組織・職務に翻訳して落とし込むために「戦略→組織→職務」という流れ(組織デザイン)に沿って、職務に求められる職責(成果責任)を明らかにすること、その職務を評価し等級化すること、そして社内の誰が適材か、複数の候補者の中から人事情報によって適材を決め「配置」する。これによって「適所適材」が実現されるのである。
 だが、多くの企業では、優秀な人材は限られ、また優秀者はその上司が手放したがらないため異動・配置が難しいケースが多い。組織デザインが重要であるのと同時に「人材の見える化」と「把握」も重要となる。組織改編を踏まえて、「各ポストを担えるのは誰か」を特定するためには「誰が、その職責を果たし得る力量と経験を備えているか」という問いに答えられなければならない。そして、現在はそれなりに候補人材がいる場合でも、次の候補人材の育成・開発(リーダーシップ開発)を行い、パイプラインを太くしておくことが重要になる。
 ポスト・職務ごとに、誰が次の適材か、その候補人材がそのポストに就くまでに、どのように備え、力量を高めてもらうかを考える「サクセッションプラン(後継者育成計画)」が職務型人事・賃金制度を機能させる上で重要となる。リーダー人材の育成では、研修など座学で得られるより実際の経験を通じて得られるものの方がはるかに大きい。しかし、成長につながるポストや職務が無尽蔵にあるわけではない。限られたポスト・職務に誰を優先的に据えて、経験させるかがサクセッションプランを通じたリーダー育成のポイントである。
 一方、人基準の職能型人事を成立させるためには、社員の成長に応じて与える仕事とポスト(異動)が十分に存在することが必要となる。そうでないと配置が固定化して、やる気が低下し、能力発揮がおぼつかなくなることもある。また、能力はITなどの技術革新が進み、事業内容そのものや業務プロセスに大きな変化が起きると陳腐化することがある。一度獲得した能力が仕事の成果に確実に結びつくとは限らない。社員に求める能力が変化するほど、その変化に応じて能力要件の再定義を行わないと能力に応じた処遇は機能しなくなる。
 社内で充足できないスキルと経験を持つ人材を社外に求めるということは、翻ると自社の社員が他社から声を掛けられるということでもある。社内だけでなく、社外も含めた広い労働市場で人材の獲得と引き留め(優秀者が他社に引き抜かれないようにすること)の必要性があることを意味している。このような変化が、企業の人事・賃金の根本的な考え方に変化をもたらしている。
   


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