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社員のキャリア形成を促す新人事制度・・・戦略的キャリア・マネジメント(供
 
       
2016年2月25日    グローバル化の時代、どんな企業でも、全ての消費者に全ての価値を与えようとしては成功できない。成功するには、その企業だけが市場に提供できる独特の価値(業務上の卓越性、商品の優位性、顧客との親密性)を発見しなければならない。つまり、ビジネスの焦点をある一つの価値基準に特化し、その分野でナンバーワンの地位を築くのである。
 なぜ、一つの価値基準に絞るのか。その理由は、異なる顧客は異なる種類の価値を買うからである。あらゆる次元で一番になろうとしてもそれができない以上、顧客を選別し、自社の価値の焦点を絞り込むほかない。また、このような比類なき価値をつくるには、その価値だけに全力を注ぐ卓越した組織・人材モデルが必要になる。
 例えば、「業務上の卓越性(オペレーション・エクセレンス)」を追求する組織であれば、品質・価格・納期・購入の総合力において市場で最高水準を保てる(規格化できる)オペレーション人材が求められる。また、「商品の優位性(プロダクト・リーダー)」を追う組織であれば、商品性能の限界をとことんまで追求できる(商品開発・市場開拓等)イノベーション人材が求められる。さらに、「顧客との親密性(カスタマー・インティマシー)」を追求する組織であれば、顧客に最も近い社員にできるだけ権限を委ねて、顧客の問題解決に協力し、解決策を提示できるソリューション人材が不可欠である。
 企業人事は、戦略的であることが求められる。どう戦略に必要な人材を育成し、活用していくのかが、戦略的キャリア・マネジメントの重要な論点となる。

 キャリア・マネジメントの位置づけ
 米国では、1980年代の経済不況による大量レイオフ(解雇)以降、人材を戦略実行の重要な資源と見なし、人材に望ましい行動を引き出すための戦略的人材マネジメントの研究(戦略的人的資源論)が始まった。そして日本でも1990年代に、バブル崩壊に伴う成果主義人事が検討される頃から、「戦略人事」という言葉が使われるようになった。
 しかし「戦略人事」には統一した概念がなく、「戦略を実行するうえで必要な人材マネジメントを行うこと」という考え方もあれば、「優秀な人材を揃え、組織力を整えることによって、戦略が実行しやすくなる」という考え方もある。つまり、チャンドラー氏の「組織は戦略に従う」が前者であり、アンゾフ氏の「戦略は組織に従う」が後者である。その他にも、「組織は戦略に従うというより、むしろ流行に従う」といった、ある社会学者の言葉もある。組織を人事に置き換えても同じことがいえる。
 このように「戦略人事」にはさまざまな考えがあるが、人事の担当者は、最近の人事管理の動向、とりわけ業績の良い企業や大企業の人事管理をモデルとして自社に取り入れようとする。確かに、人がやる気になる環境や施策は、業種や国が違っても同じであるため、「エクセレント・カンパニー」や「ビジョナリー・カンパニー」といわれる高業績企業では似たような動機づけ施策を行っている。しかし、高業績企業において効果があった人事施策が、自社でも効果的であるという保証はない。また、企業の持続的競争優位はそもそも「他社にとって模倣困難であるからこそ、その源泉となる」という戦略論の命題を自覚すべきである。
 優れた業績を継続してあげている優良企業の人事管理を研究し模倣することは重要である。しかし、個別企業の人事管理はその企業の歴史や様々な事情と複雑に結びついているから、「わが社らしさ」をつきつめてアレンジしていかないと意図せざる適応不全を起こすことになる。その典型例が結果重視の成果主義人事であるが、同じように「なぜわが社」にキャリア自律の人事施策が必要なのか、再考してみる必要がある。もしかすると、キャリア自律という流行に乗り遅れないようにしているだけかもしれない。
 
 日本におけるキャリア自律支援
 日本において「キャリア自律」が重要だと盛んに言われるようになったのは、日本企業が過剰な労働力の調整を迫られた90年代後半からである。デフレ不況と競争のグローバル化の下に人件費の下方硬直性に悩まされていた日本企業は、コスト競争力を取り戻そうとアメリカにおける柔軟な市場志向(競争原理と市場メカニズム)の人事管理に倣おうとした。
 99年4月に日経連(現・日本経営者団体連盟)は「エンプロイヤビリティの確立をめざして」という報告書を発表している。この報告書では、「エンプロイヤビリティ」が「労働移動を可能にする能力」+「当該企業の中で発揮され、継続的に雇用されることを可能にする能力」と定義されている。そして、この報告書を境に企業内の能力開発の主体が企業から個人に移行し、企業の教育・訓練費が大幅に削減されたのである。
 このエンプロイヤビリティ(Employability)という用語の母国・米国では、80年代の経営合理化=レイ・オフ(人員整理)でホワイトカラーを中心に大量解雇を行い、労使関係の悪化と社員のモラールダウンを招くことになった。90年代に入って、それを改善しようとする過程の中で生まれたのがこのエンプロイヤビリティである。エンプロイヤビリティは、いわば雇用保障に代わる労使間の新しい「社会契約」として提案されたのである。つまり、「経営側は雇用を保障しない代償として、社員に対して他社でも通用する高い技術や能力を身につけられるだけの教育・訓練の機会を提供する」というものである。このようにエンプロイヤビリティは、もともと解雇が頻繁に行われ、キャリア意識を持つ社会環境のなかで、失業回避の手段として、あるいは解雇することの代償として提供されたものである。
 しかし、およそ10年を経て、日本企業におけるキャリア自律の内実は、米国におけるそれとはかなり異なるかたちで進展した。すなわち、米国における自律的キャリア開発は、日本企業に比べてより市場志向的な雇用慣行(雇用期間は短く、離職率は高く、教育訓練投資は少なく、賃金や採用・昇進・異動は市場水準その他の外部基準に基づいて決まる)と補完的に結合していた。だが、日本におけるキャリア自律は、米国に比べてより組織志向的な雇用慣行(長期の雇用、低い離職率、広範な教育・訓練、年功という組織内配慮に基づく賃金や採用・昇進異動の決定)との補完性が要求されたのである。
 つまり、日本においては…拘雇用を基礎に、∩反テ發亮律的なキャリア選択を奨励し、その代わりに職務上の成果を強く求める、という個人と組織の新たな心理的な契約関係をその基盤にしているといえる。また、このことは経営者の社員に対する雇用責任や教育訓練の責任を放棄することを意味しない。それはむしろ「企業や社員に必要とされるスキルを、社員自らが選択し、獲得することについて、企業が支援を行う」という方向へ変化することを意味している。

 キャリア自律支援の現状
 次に、社員のキャリア自律支援の現状についてみてみよう。やや古い資料になるが、2007年10月に産労総合研究所が発表した「ホワイトカラーのキャリア開発調査」によると、





○ ○
新卒者の配属先希望は7割の企業が把握、約6割の企業でかなえている。
新入社員が一人前になるまでに「3〜5年」、異動は少なくじっくり育てるが全体の7割。
4割の企業がキャリア研修を実施、研修内容は「自己理解・自己分析」(85.5%)、「キャリアの棚卸し」(66.7%)、「キャリア開発プランの作成」(59.4%)。
キャリア・カウンセラー(相談)がいる企業は1割と少数。
社内公募制度を実施している企業は約3割、社内FA制度は6.5%とかなり少ない。
その他のキャリア支援として、「評価結果の本人フィードバック」と「自己申告制度」が約7割、「目標管理」が6割弱、「コンピテンシー・職務要件の明示」が4割と高い。
その一方で、「一人ひとりのキャリアプランの作成」や「評価・育成計画の公開」「上司面接による情報の人事配置への活用のしくみ」「人事情報データベースの活用」などは2割とまだ少ない。
 以上の調査結果から、回答企業の人事担当者からは「日々の業務が優先され、キャリア支援は後回し」、「キャリア支援者としての認識が上司にない」、「雇用の多様化に研修制度が追いついていない」、「キャリア支援部署と現場の考え方にギャップがある」、「現場の人材抱え込みがみられ、個々の適材適所や育成を考えたローテーションが活発に行われているとは言い難い」など、理念や理想はあっても、現実には思うように進まないキャリア支援のへの難しさが指摘されている。

 企業のエンプロイメンタビリティ
 社員にエンプロイヤビリティ=キャリア自律の重要性が認識されてくると、そこで働く社員が企業を見る目は大きく変化してくる。このまま働くことでエンプロイヤビリティが高まる企業であるかどうかということが、非常に大切な視点になる。
 自分のやりたい仕事ができ、しかも一つの会社の枠を超えて将来が拓けるかどうか。具体的には、企業に次のようなことに十分応えてくれる「場」があるかどうかが問われてくる。




他社でも十分通用するだけの専門能力を磨くことができるか。
質の高い最先端の情報が得られるか。
将来役に立つ人脈が得られるか。
プロとしてのマインドが磨かれるか。
 エンプロイメンタビリティとは、単に賃金支払い能力が高いということだけではなく、社員のキャリア支援、より魅力的な職場や仕事の機会の提供、魅力的な人事制度――など、
それらがどれだけ魅力的で、優秀な人材を継続的に雇用することができる企業であるか、"総合的な企業の能力"という意味で使われる。
 長く勤められることは良いことだが、仮に短期間しかその企業に在籍しなかったとしても、自分の能力を十分に活かして成果をあげることができるかどうか、成果に見合った処遇が保証されているかどうかも、その企業で働くことを選択する重要な条件になる。人材流動化が進めば、中途採用者がハンディなく働けるかどうかも問われる。
 企業にとっては、自律したプロフェッショナルとして実力のある人材を、どれだけ引きつけ、長期的に成果をあげてもらうことができるかどうかが、最重要課題になる。特に魅力的なフィールドをエンプロイヤビリティの高い人材に提供できない企業は、優れた人材を市場に放出せざるを得ず、また放出した人材以上の人材を新たに採用することができず、競争のなかで勝ち残ることはできない。つまり、人材のエンプロイヤビリティを求める程に、企業はエンプロイメンタビリティが問われてくるのである。

<このテーマに関連する資料>
個人の能力とリーダーシップを開花する(タレント・マネジメント)

多様な社員のインセンティブと動機づけ(戦略的人材管理)
自立型人材育成と経験学習とパイプラインモデル
   


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