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■企業のパフォーマンスを向上させる・・・人材ポートフォリオ・マネジメント
 
       
2015年11月28日    今月4日に厚生労働省が発表した「就業形態の多様化に関する総合実態調査(2014.10.01時点)」によると、パートや派遣など非正規社員が占める割合が、1987年の調査開始以来、初めて全体(賃金労働者)の4割に達した。今回の調査対象とは異なるが、バブル崩壊前の1990年の非正規社員の割合(総務省「労働力調査」)が20%であったことを考えると、25年間で倍増したわけであり、確かに4割という数字には強いインパクトがある。
 だが、企業が正規社員(長期雇用者)を重視するか否かは、時代によって、また個々の企業がとる戦略によってそれぞれ異なる。戦前の日本は長期勤続者の割合が少なく、極めて人材流動化の激しい社会だった。激化する戦時下で、総力戦に対応するために長期雇用者が重視されはじめたのは、国家総動員法(1938年)に基づく第二次大戦がきっかけだった。つまり、国ごとの歴史や文化の影響を受けると考えられている雇用関係も、未来永劫変わらないわけではないのである。また、企業が事業戦略を達成するために、どのような能力を有した人材が、どのタイミングで、どの程度必要になるのかによっても、企業の雇用・労働形態は変わってくる。
 近年の就業形態の多様化(人材活用の多元化)は、総人件費の削減、市場の不確実性や迅速な事業展開への対応などのために進行している。このような理由で多様な就業形態の労働者を職場内に導入することは、好ましい影響を職場にもたらすかもしれない。しかし、その一方で、労働者のモラールと社員コミットメントの低下を引き起こし、生産性を引き下げる可能性も考えられる。実際、非正規社員や外部労働力の活用にはプラスとマイナスの影響がある、とする報告がなされている。
 そこで、正規社員あるいは非正規社員を戦略的に活用し、企業のパフォーマンスを向上するには、どのようにマネジメントしたらよいのか、人材ポートフォリオ・マネジメント(人材戦略)のあり方について考えてみたい。

 増え続ける非正規社員の実態
 まず、今回厚生労働省が発表した総合実態調査の概要について整理してみよう。
●3年前(平成23年)と比べた事業所の就業形態別人数の増減については、「正社員」が「減った」割合(27.2%)が「増えた」割合(20.6%)を上回っている。非正規社員については、「減った」(14.2%)が「増えた」(14.1%)をわずかに上回っている。(表2)
●非正規社員の今後の増減の変化予測では、「上昇する」(9.3%)が「低下する」(7.4%)を若干上回っている。特に割合が高い産業は「生活関連サービス業・娯楽業」、「複合サービス事業」、「金融業・保険業」、「運輸業・郵便業」である。(表3)
●3年前と比べて非正規社員の労働者比率が上昇した事業所の就業形態を見ると、「パートタイム労働者」(59.3%)が最も高く、次いで「嘱託社員(再雇用者)」(21.6%)、「契約社員(専門職)」(12.7%)などとなっている。(表4)
●さらに、今後非正規社員の労働比率が上昇すると回答した事業所の就業形態を見ると、「パートタイム社員」(62.1%)、「嘱託社員(再雇用者)」(27.3%)、「契約社員(専門職)」(16.7%)と、いずれの就業形態も増えている。
 以上の調査結果から見えてくる職場の姿は、社員たちが非常にバラエティに富み、ある人は働く時間が短く、ある人は仕事が限定されている。また別の人は新たな労働条件で慣れ親しんだ仕事を継続して行う。そういう新しい働き方をする社員は、とうとう全体の40%を占めるに至った。こうした勢いが当分は弱まりそうにないが、そこから企業にとってどんな問題が派生してくるのだろうか。

 なぜ境界が曖昧な複数の雇用区分が生まれたのか
 バブル崩壊後の日本の企業は、人材活用の方針(単一化から多元化へ)を大きく変えた。解雇規制が厳しい正規社員を減らす一方、有期契約のパートタイムや派遣社員の活用を増やし、また業務そのものを外部に委託(アウトソーシング)する動きを加速させてきた。それと同時に、正規社員の中にも地域や職種限定社員など複数の雇用区分が導入された。
 また、非正規社員の中にも、管理・監督的な仕事を担う人材や高度な技能を求められる人材が誕生し、従来の正規社員と非正規社員といった単純な区分が意味をもたなくなってきている。つまり、「パートタイム=労働時間の短い人」という本来の意味だけでなく、フル勤務で、しかも契約更新が何度も行われ、勤続年数が正社員と変わらない人も少なくないのである。
 ここで現状の非正規社員について少し整理(なぜ非正規社員が増えるのか)しておこう。
 企業が変化と不確実性に打ち勝つためには、「柔軟性」が最強の武器になることはいうまでもない。「柔軟な企業(1985)」モデルを提唱した、イギリスの経済学者アトキンソン氏は、「機能的柔軟性(新しい職務に人材の技能が一致できるよう技能開発をしていく)」、「数量的柔軟性(需要の変動に応じて労働者数と労働時間を増減させる)」、「財務的柔軟性(企業の支払い能力に応じて人件費を支払う仕組みを持つこと)」の三つの「柔軟性」を向上させつつ、これらを均衡させねばならないとした。
 実際、日本企業における非正規社員の増加(活用)は「数量的柔軟性」と「財務的柔軟性」を向上するために行われたといってよい。非正規社員は、企業の周辺業務領域からスタートし、当面の人件費を低下させ、正規社員の増加を抑制した。その後、非正規社員化が定着してくると、徐々に非正規社員に任せる「周辺業務」領域が拡大してきた。それに伴い、非正規社員の絶対量が増加し、彼・彼女らの職務内容の難易度も高まってきた(非正規社員の数量的・質的基幹化)。特に、難易度の高い職務を担当する非正規社員を担保するためには、契約の更新や正社員化が行われることになった。
 しかし、非正規社員に関しては、採用・職務の割当て・評価と処遇改定などのマネジメントがほぼ現場の裁量にゆだねられていて、人事部門の目が届きづらいという実態がある。これは、非正規社員をどのように活用していくのか、全社的な人材管理に関するグランドデザインがないことの証拠でもある。計画性のない、行き当たりばったりの非正規社員化は、景気の回復・拡大とともに、当初の目的であった数量的・財務的な柔軟性を損ねる要因になってきている。

 「柔軟性」と「安定性」をバランスさせる人材ポートフォリオ
 企業の成功は、企業独自の価値観(なぜ、わが社は存在するのか)を顧客に提供できるかどうかで決まる。顧客に価値を提供する能力は、顧客のニーズや価値観を正しく把握し、価値を創造するための優れた人材管理から生まれる。したがって、企業経営の真の課題は、人材管理のあり方を再検討し、そこから生まれてくるイノベーション(革新)を利用して組織を活性化することである。
 多くの経営者は、「イノベーション」を奇抜なアイデアを生み出すこと、と考えている。しかし、成功している企業の共通点は、奇抜なアイデアではなく、地道な組織の立て直しによって、大きな競争力を得ていることだ。非情なリストラ(人員削減)や人件費を削減するだけの非正規社員化(身分としての)は、短期的な企業業績にメリットをもたらすが、中長期的な組織、ひいては業績にマイナスの影響を与えるという報告が多数なされている。人材活用に失敗し経営の悪循環に陥った典型例として、アップルコンピュータの事例がある(「人材を活かす企業」フェファー著、1998)。
 企業は業績が危機的な状況に陥ると、最も安易な解決策である人件費の抑制・削減を図る。だが、非正規社員の増加や社員教育費の削減などを行うと、こうした措置が社員のモラールやモチベーションを低下させる。そして、生産性を著しく低下させ、その結果として売上げ・利益が打撃を受ける。こうした負の連鎖が続くのが、典型的な悪循環の例である。フェファー教授(スタンフォード大学)は、雇用保障は社員が高い業績をあげる7つの要因のひとつであると述べている。それでは、企業組織力を維持・向上していく人材活用戦略として何が考えられるであろうか。
 その一つは、雇用区分を再整理(人材ポートフォリオ)することである。すでに述べたように近年は、正規社員にもさまざまな雇用区分があり、非正規社員であっても企業の基幹的な職務(常用雇用化)を任される者も少なくない。そうであれば、正社員・非正社員というこれまでの枠組みを一度ご破算にし、仕事やキャリアなどに応じて、雇用区分を再整理することである。そもそも正規社員・非正規社員という考え方は、あくまでも慣習的なものであって、企業側と働く人の意識が変化すれば大きく変わる可能性がある。
 人材ポートフォリオは、企業戦略の実現に必要な人材タイプを明確にしたうえで、組織内の多様な人材を分類・把握し、最適な人材タイプの組み合わせを設計するのが目的である。ひとくちに「戦略の実現に必要な人材」といっても、組織が人材に求める役割(職務)や行動は一律ではなく、さまざまな人材タイプを、それぞれの資質や貢献のあり方に応じて効果的に配置・処遇することで、はじめて組織全体の生産性向上につながり、戦略が実現されるのである。

 雇用形態別の人材ポートフォリオ
 一般的に雇用形態を大きく分けると、’標社員、▲僉璽伴勸、7戚鷦勸、じ堕蠕亀社員(一般職)、ダ亀社員(総合職)の5つに区分される。▲僉璽伴勸からダ擬勸までが直接雇用で、その内の7戚鷦勸からダ擬勸までが常用雇用、い鉢イ正規雇用である。
 なお、雇用形態別の人材ポートフォリオの参考例を示すと以下の通りである。
 ’標社員に関しては、臨時的な仕事を担当してもらい、なぜこの仕事を派遣に担ってもらうのか、社内でしっかり確認しておく必要がある。法律で同じ職場で同じ派遣社員を3年までしか受け入れられない。人物・能力をみて、優秀な人材は契約社員、限定正規社員への登用を行う。
 ▲僉璽伴勸に関しては、パートタイム労働法を遵守することが基本である。この法律におけるパート社員とは正社員よりも週の所定労働時間が短い人で、アルバイトも含まれる。
 7戚鷦勸に関しては、期限付き就労であっても長期間の習熟期間が必要な業務やチャレンジしがいのある仕事を担当する。ただし、技術継承の業務にはつかせない。期限の周知徹底と転職支援を行う。
 じ堕蠕亀社員に関しては、職域・地域が限定されているが、会社風土に合致し、企業理念を理解している。社内要件(キャリア形成等)と本人の希望により、正規社員(総合職)への転換を行う。
 ダ亀社員に関しては、キャリアの拡大志向や自分の能力・地位に対する上昇があり、本人の希望により限定正規社員への転換を行う。
 上記の参考例は、「雇用期間」「熟練・継承」「職域・地域限定」という三軸(基準)で判断し、それに応じて活用する社員の就業形態を決めている。これに実際の人物を採用する場合は、人物・志向と能力の2軸で、評価内容を変えながら選んでいくことになる。景気の回復によって、人材確保が大きな曲がり角を迎えた今、人材ポートフォリオの見直しが急務となっている。

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 人手不足時代の新人事制度
   


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