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■評価が分かれる労働基準法改正案・・・高度専門職制度と裁量労働制
 
       
2015年5月28日    働いた時間でなく仕事の成果に応じて賃金を決める新たな労働制度「高度プロフェッショナル制度」の導入を柱とした労働基準法の改正が、いよいよ今国会で法律化される見通しが出てきた。それでなくても日本企業は長時間労働が常態化しているし、実質賃金は下がり続けている。そのうえ際限のない労働時間によって健康を害する人が増えてしまうのではないかといった「実施反対」の意見が拡がっている。
 それでは、なぜ今、労働時間改革が必要なのか。問題意識は2つある。その1つは「長時間労働への対応」である。すでに触れたように日本企業の場合、特にヨーロッパ諸国に比べ長時間労働者の割合が高いことが知られている。その要因として、外部労働市場の未発達による転職コストの大きさ、社員の職務の不明確さ、密接な社内調整による負担、解雇回避を目的にした長時間労働の常態化(雇用調整の緩衝確保)がある。これは単に労働時間法制を見直すだけでは十分でなく、他の規制や働き方自体の変革も求められる。
 そしてもう1つが、「労働時間設定の柔軟化」である。グローバル競争の激化、イノベーションの加速など企業を取り巻く環境の変化が速くなり、不確実性・複雑性が増大してきている。そうした中で、いかに生産活動における柔軟性を確保するかが企業の大きな経営課題になっている。一方、働く側も多様な働き方を志向するようになり、企業と労働者の両方から労働時間柔軟性の要請が高まってきている。
 今日この問題は日本のみならず先進諸国に共通する大きな課題となっている。この場合、個々の企業や労働者の状況に合わせて労使が十分にコミュニケーションを取る必要があるが、果たしてそのための環境整備がなされているのか考えてみたい。

 先進諸国の労働時間規制と最近の変化
 日本の労働時間規制を考えるために欧米の労働時間規制をみると、アメリカとヨーロッパに大きく分けることができる。アメリカは労働時間を直接は規制していないが、法定労働時間(週40時間)を越える時間外労働には50%の割増賃金を義務付けている。一方、ヨーロッパ諸国では労働者の健康と安全を目的として、11時間(勤務終了時から翌日の勤務開始時まで)の勤務間インターバル規制や平均して週48時間を越えない最長労働時間などが定められている。(ただし、個別にオプト・アウトは可能)
 しかし、労働時間規制が元々強いヨーロッパ諸国でも、近年は労働時間の柔軟性への取り組みが進んでいる。フランスでは、時間外労働や割増賃金の規制が大幅に緩和され、企業単位での労使協定に任されるようになってきている。また、ドイツでも割増賃金の義務付けが法律上撤廃(1994年)され、銀行口座のように所定外労働時間を労働時間口座に貯蓄し、休暇で使える労働時間貯蓄制度が普及している。両国ともに雇用・労働のあり方を定める労働協約の存在が大きくなるとともに、その反面で割増賃金等の金銭補償への依存が低下してきていることが注目される。その他に南欧諸国など(イタリア、ギリシャ、イギリス、ポルトガル)では金銭的補償の割合は比較的高いが、北欧諸国(オランダ、スウェーデン、デンマーク、フィランド)では休日代替の割合が高くなっている。

 日本の労時間規制と改革の方向
 1日8時間、週40時間の現行の法定労働時間を越える労働は、罰則をもって原則禁止とされているが、「三六協定」によって法定時間を越えて働かせることは実質的には可能であり、長時間労働を抑制する実効性には乏しい。また、長時間労働への歯止めは実質的には割増賃金に依存しているが、月60時間以下は25%とアメリカを下回っている。さらに、年次有給休暇の日数についても、ヨーロッパ(EU指令)の最低4週間に対して、10日〜20日と少なく健康安全確保に十分配慮した規制体系とはいい難い。
 上記以外の例外的措置(管理者、見なし労働時間、変形労働制、裁量労働制など)についても複雑で使い勝手が悪く、運用に歪みが生じていることも問題である。例えば、裁量労働制の要件を満たす敷居は高く、ほとんど使われていない。反面、管理監督者の適用除外制度は使い勝手の良さが「名ばかり管理職」の問題を生む原因となっている。
 では、日本の労働時間改革をどのように考えればよいのだろうか。第一に、割増賃金に依存した規制から、休息や休日に焦点を当てた労働時間から解放する規制体系への転換が重要である。第2は、法律による一律的な規制から、労働時間や働き方の柔軟性を確保していくために労使協定に基づく分権的規制を推進していくことである。具体的には、\源裟や競争力を維持しながらも健康安全確保のための規制のあり方、∀働時間貯蓄制度や年休時季指定権の使用者への付与など、時間外労働への金銭補償のあり方、自律的な働き方ができるように、使い勝手の悪い裁量労働制などは法律で一律に定めるのではなく、労使協定(労働協約)を強化するなどの例外措置のあり方、について検討していくことになる。

 「高度プロフェッショナル制度」とは
 今回の労働基準法の改正案は「高度プロフェッショナル制度」の導入と「企画業務型裁量労働制」の拡大の2つである。両者は、労働時間の長さに関わりなく、労働の質や成果によって賃金を定めることを可能にするという点で共通している。他方、2つの制度が認められるための条件や、法的な効果には違いがある。まず、「残業ゼロ」制度と批判されている「高度プロフェッショナル制度」から見てみよう。
 この制度の適用対象者は、/μ拡楼呂明確な「金融ディーラー」「アナリスト」「金融商品の開発」「研究開発」「コンサルタント」であること(今後の検討で増える可能性がある)、「職務記述書」を作って職務範囲を明確にすること、この制度の適用を「希望する人」であること、で収1075万円以上であること、の4つの条件に当てはまる人である。
 そして、この条件に当てはまる人には、ハ働時間管理の対象から外し、時間外労働手当、深夜労働手当、休日労働手当が支給されない、ο働時間でなく、成果で賃金を算出する、Х鮃安全維持策として「年104日の休日」「終業から次の始業まで一定のインターバル時間を置く」「働く時間に上限を設ける」のいずれかを労使で選ぶことになる。また、年収は「平均給与額の3倍を相当程度上回る(厚生労働省の指標では936万円)」ことが法律に書き込まれるが、具体的な金額(1075万円)や業務は省令(随時変更が可能)で決めることになっている。
 経団連の榊原会長は、記者会見で高度プロフェッショナル制度を実効性のあるものにするには「年収要件の緩和」や「対象職種を広げること」が必要だという考えを示している。この発言に対して、「対象がどこまで広がるのか」不安の声がでている。先々の変更については不明であるが、現段階においては労働時間管理の対象外である中間管理職(課長)の平均年収でも1000万円には届かない。一般社員が残業代ゼロになることを心配する必要はないようである。

 「企画業務型裁量労働制」とは
 高度プロフェッショナル制度は「労働時間管理の法的規制が適用されない」のに対して、企画業務型裁量労働制は「労働時間の設計を本人に任せる」制度で、労働時間はあらかじめ算定していた時間数とみなすので、一定の労働時間管理がなされる。つまり、会社が1日の労働時間を9時間とみなせば、法定労働時間の8時間を超える1時間分の割増手当はでるが、それを超えて働いても残業手当は支給されない仕組みである(ただし、深夜・休日労働は割増賃金が支払われる)。
 これまでの企画業務型裁量労働制の対象業務が「企画、立案、調査、分析を一体で行う人」に限られていた上に、労基署への報告義務が煩雑だったため、この制度を導入している企業は0.8%に過ぎない。今回の改正では手続きを緩和し、さらに対象業務を増やした。追加した業務は、「課題解決型提案営業(ソリューション営業)」である。顧客のニーズを聞き、それにふさわしい製品やサービスを提供する営業職である。これには店頭販売やルートセールスは入らないが、それ以外の営業職はほとんどが対象になる。
 追加業務のもう1つが「企画、立案調査、および分析を行い、その成果を活用して裁量的にP・D・C・Aを回す業務」である。やや判りにくいが、営業職以外の事務職の業務を指している。審議会の報告では「個別の製造業務や備品等の物品購入業務、庶務・経理業務は入らない」ということだから、製造業務や定型業務は含まれないが、それ以外の業務は対象となる可能性がある。
 企画業務型裁量労働制は、高度プロフェッショナル制度と違って年収要件がない。ということは、企画業務型裁量労働制の対象になれば、みなし労働時間を何時間に設定するかで、残業手当が支給されない分が生じてくるもある。みなし労働時間は何を基準に、どのような手順で設定するのか、労使間でルールづくりの話し合いが必要になってくる。
 また、高度プロフェッショナル制度の対象者になると、労働時間規制の適用除外となり休日・深夜割増手当が支払われなくなる。一方、もともと適用除外の対象であった「管理職」には深夜の割増手当の支給が残っている。つまり、夜の10時以降に高度専門職と管理職が一緒に仕事をしても、管理職には残業代がでても高度専門職には出ないという法令上の矛盾が発生することになる。生産性の向上には、より成果を上げられるように、社員のエンゲージメントを高めていく必要あるが、企業は今回の基準法改正をどのように人事政策に活かしていくだろうか。その結論は来年4月1日の施行後にハッキリする。
   


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