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デフレ脱却の期待が膨らむ・・・2015年春闘の課題
 
       
2015年1月28日    新年を迎えると、企業人にとって気になるのが「今年の景気はどうなるのか・・」である。未(ひつじ)年の2015年は「未辛抱(しんぼう)」、つまり「我慢の年」というのが株式相場における定番である。年明けの株価は、急落後に反発し、再び下げるなど波乱が続いている。
 多くの企業人にとって、株価の動向以上に気になるのが雇用と賃金の問題ではないだろうか。総務省の「労働力調査(2014.11月)」によると、非正規の労働者数は2012万人(前年同月比48万人増)と、この調査を開始して依頼、初めて2000万人を突破した。また、厚生労働省の「毎月勤労統計調査(2014.11月確定)」によると、実質賃金は前年同月比2.7%減と実に17ヵ月連続の減少となっている。
 一方、財務省の法人企業統計調査によれば、2013年度の内部留保(利益剰余金)は過去最高の328兆円に達している。1990年代の年平均増加率が3.1%だったのに対し、労働者派遣法が原則自由化(1999.12月)になった2000年以降の年平均増加率は5.8%と、積み増しのペースが加速している。
 このような状況を踏まえ、国内設備投資の不足や賃金の抑制、非正規雇用の拡大等を指摘して、企業行動を批判する見方も少なくない。確かに、2000年以降の賃金と物価・生産性との関係(年平均上昇率)を見ると、名目賃金の下落率が消費者物価の下落率より大きく(実質賃金の低下)、労働生産性(実質GDP)の伸び率よりも一人当たり雇用者賃金の伸び率の方が低い(デフレ要因)。
 なぜ、「働けど働けど なお我が暮らし楽にならざり じっと手をみる(石川啄木)」といった状況に至ったのか。労働市場のメカニズム(景気回復期には労働需要が拡大し、賃金は上昇する)が働かない、わが国特有のこの問題を解決しなければ、デフレ経済から脱却することはできない。企業収益・生産性向上を賃金に結びつけていくための仕組みについて考えてみたい。

 賃金はどう決まるのか
 市場経済においては、すべての価格は需要と供給の関係で決定され、賃金とて例外ではない。労働需要が高まれば賃金は上昇し、弛緩すれば賃金は下がる。ただし、実際の賃金には「下方硬直性」と「上方硬直性」の二つがよく指摘される。
 賃金の「下方硬直性」とは、労働需要が緩んでも賃金は低下しにくいということであり、上方硬直性はその逆である。つまり、不況で雇用が減退しても賃金(価格)はあまり下がらず、その代わり失業(量)が増加するという現象が賃金のもつ下方硬直性である。他にも賃金の下方硬直性の原因として、最低賃金法や労働組合の交渉力、または経営側の高賃金施策(生産性の高い労働者の転職を防止する)などが挙げられる。この賃金の下方硬直性によって、不況期には労働分配率が上昇するといわれているが、わが国では所定外賃金や賞与の比率が高く、人件費の下方硬直性が乏しいともいえる。
 逆に賃金の「上方硬直性」が問題となる場合もある。例えば、高齢化が進む現在は介護士の労働需要が大きいが、賃金が低いために職に就く人が少ないという問題が顕在化している。介護保険報酬の制約があるために賃金の処遇改善が難しく、慢性的な人手不足になっている。介護保険制度の制約が、介護労働市場の自然なメカニズムを阻んでいるのである。また、働く仕事の内容や技能が比較的に標準化されている職種では、個別企業の枠を超えて賃金は概ね同水準に収斂される傾向(世間相場)がある。市場メカニズムに従えば、「同一労働・同一賃金」という論理が成り立ってくる。ただし、その論理が単純にいかないのは、企業の財務的状況や賃金に対する個々の企業の考え方が賃金に反映されてくるからである。
 以上は賃金が決定される上での基本的な考え方であるが、では「何故、わが国では企業収益・生産性の向上が賃金に反映(連動)されないのか」その原因(上方硬直性)について考えてみたい。

 なぜ賃金は上がらなくなったのか
 バブル経済の崩壊後、「失われた10年」といわれているように日本の経済は長期にわたって低迷している―と日本人の多くが考えている。だが、日本生産性本部のデータ(「日本の生産性の動向」2014年版)によると、1999年から2007年までの9年間、およびリーマンショック後の2010年から2013年までの4年間の実質労働生産性(物価変動を考慮)は上昇している。では、国全体の生産性が向上しているのにも拘らず、なぜ「豊かさ」が実感できないのだろうか。それは、労働生産性の上昇分が就業者全体の賃金に反映されなくなったからである。
 90年代末の景気後退局面において、企業は雇用・設備・債務の三つの過剰を解消するために財務体質の強化を最優先し、債務を大幅に圧縮して、人件費削減の姿勢を鮮明にした。また労働組合も、雇用を維持するために賃上げ要求を抑え、非正規雇用の増加を容認した。こうした労使双方の「守りの姿勢」によって、産業間における労働移動が減り、雇用を維持するための事業構造転換への取り組みは全体的に停滞した。それが日本企業の競争力を低下させ、デフレの深刻化にもつながっているのである。
 そもそも企業内組合には、雇用維持を優先するという傾向があるが、新興国の台頭で海外生産移転の圧力が強まるなか、労働組合は賃金を生産性や物価動向と連動させて要求することが難しくなり、返って産業界全体に賃上げ要求を抑制する雰囲気を広げることになった。その結果、企業は非正規雇用の比率を高めると同時に、年功賃金是正の名目で成果主義賃金を導入し、正規社員に対する賃金抑制を強めてきた。こうして春闘で克服しようとした企業内組合の交渉力の弱さという問題が再び顕在化し、賃金の抑制・下落が常態化する状況が生まれたのである。
 非正規雇用者は平成5年から平成15年までの間に増加し、以降現在まで緩やかに増加(2014.11月時点38.0%)している。非正規雇用者は賃金が低く、経験を積み上げ或いは労働需給がタイト化してもほとんど賃金上昇につながるわけではない。当然、昇給の対象外でもあり、これが経済全体でみた一人当たり平均伸び率を引き下げている。つまり、春闘賃上げ率と所定内給与が連動しなくなっているのである。したがって、まずは非正規を含めた全従業員の平均賃金を中長期的な生産性上昇率と連動させることが望まれる。

 「生産性基準原理」や「逆生産性基準原理」は終焉したのか
 「生産性基準原理」とは、70年の春闘交渉で旧日経連が提唱した考え方で「昇給は生産性上昇率の範囲内で抑えるべき」という日本企業の経営者が長期にわたって昇給を考えるときの基本的な考え方である。ここでの生産性とは、<実質国内生産(GDP)÷全就業者数>を指している。これに対して、労働組合サイドは実質賃金の上昇率を実質生産性上昇に合わせるべきという「逆生産性基準原理」を主張していた。つまり、生産性上昇分の配分だけでなく、物価上昇による実質賃金の減少をカバーするために<名目賃金=生産性上昇率+物価上昇率>を目指すものである。両者は、名目賃金と実質賃金のどちらをベースに考えるのかに違いがある。大雑把にいえば、インフレに陥らないためには生産性基準原理、デフレにならないためには逆生産性基準原理を選択することになる。ただし実際には、それ以外にも、物価との相互依存関係、雇用状況等の経済的要因が存在するし、春闘の交渉の場においては、労使の力関係や昇給決定のパターンセッター(先導役)的産業の存在等、制度的、経済外的要因も賃上げ水準をかなり左右することはよく知られているところである。
 現下のデフレ経済から脱却し経済の好循環を構築していくには、賃金の持続的上昇を可能にする経済の拡大均衡状態を作り上げる必要がある。それには「ともかく賃上げをすればよい」というのではなく、‐叉襪慮胸颪任△覺覿伴益・生産性の向上に向けて労使が協力してイノベーションに取り組み、これを実現していくこと、∪源裟に賃金を連動させて賃金が決められるという基本ルールについての労使間の合意、8柩儼疎屬篝ぢ經屬猟其發防垳平が生じないように「定昇(定期昇給)」と「ベ・ア(ベースアップ)」を区分し、新たな賃上げ方式を創出すること―が求められている。

 公正な賃金を目指して
 このコラムの最後に、ミクロベースの賃金のあり方についても賃金構造の変化を踏まえて考えてみよう。
 産業構造の変化、技術革新の進展、労働者の価値観が進む中で、パートタイム等の非正規雇用者はわが国の経済社会において重要な役割を担うようになってきている。これまでの非正規雇用に対する一般的な考え方は、賃金水準は低くてよい、賞与も対象にならない、といった傾向が強かったが、このような考え方は適切ではない。処遇条件をきちんと整備することが、非正規雇用者を真に活用するうえで要件となる。現状の賃金に対する非正規雇用者の不満は決して少なくないし、経済社会全体から見ても大きな影響力を及ぼしている。
 以上の観点からして非正規雇用の一時間ないし一日当たり賃金は、同職種・同熟練の正規社員と均衡を考慮して定めることが求められる。また賃金の水準は、生産性や生計費の動きにつれて上昇していくものであり、いわゆるそれがベース・アップ(賃金表の改定)であるが、このベ・アについても、賃金水準の適正さを維持していくためには、正規社員と密接な関連の中で決定されていく必要がある。
 職種や熟練度に応じて一人ひとりの賃金をきちんと決めていくには、そのための賃金体系や賃金表を予め整備・設定しておくようにしたい。非正規雇用者の場合、勤続が比較的に短期間であることから、その時点、その時点で仕事や能力にそった賃金を正しく決めることが大切で、それができるように、賃金(時間給や日給)の絶対額を示した「賃金表」が是非とも欲しい。
 近年、労働需要がタイトになりつつあるが、人材を確保し労働意欲を高めていくためには、賃金表に基づくベ・アと定昇を区分した賃金改定が必要である。また、成果主賃金の導入(高齢者の賃金抑制)の影響によって、正規社員の30歳から45歳までの賃金水準が低下(1997年対比)してきている。この年代の基本給モデルは、上に彎曲した中ふくらみが望ましい。それが、新時代のキャリア形成カーブ、世帯形成カーブに準じたものとなる。賃金表が整備されていないことが、新時代に向けての賃金カーブの是正を遅らせている。

 デフレ脱却の前提となる経済の好循環を実現し、賃金の持続的上昇を現実のものにするには、企業は正社員だけを優先した労使関係のあり方を見直し、ユニークでクリエイティブな企業であり続けるために、ビジネス・モデルのイノベーションが期待されている。


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