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■イノベーションのジレンマを解決するリバース・イノベーション
 
       
2014年10月26日    時代は大きく変わった。発展途上国は、もはや先進国から遠く離れた未開地ではなく、世界経済の中心である。これまでイノベーションは先進国で生まれ、その製品をマイナーチェンジした廉価品を新興国に投入することで、世界に広く波及していくと考えられていた。だが近年は、中国やインド市場向けに開発した製品をグローバル市場に流通させる欧米企業がでてきた。
 かつて、日本製品に対して「安かろう、悪かろう」といわれる偏見の時代があった。確かに戦後しばらくは、物資不足によって日本の企業は「何でも作らなければ」ということで、粗悪な製品を市場に流通させてきた。その後、60年代頃から活発な品質改善活動が展開され、QC活動などが多くの企業に広がった。そして、80年代中頃から品質の高い製品が次々に生産され、世界の市場を席巻して日本は国際社会で大きく成功した。
 敗戦による貧困という究極的な制約条件の中から立ち上がってきた日本製品のように、新興国のインフラ、経済レベル、気候といった制約条件の中から生み出される、アイデアにあふれる製品・サービスが、先進国に逆流する現象を「リバース・イノベーション」と呼んでいる。これは、先進国の市場向けに設計した製品・サービスを新興国仕様に調整して、超低価格で輸出するのではなく、全く白紙の状態から新興国市場のニーズを満たすために、課題(超低価格でそれなりの品質)そのものをイノベーションの源泉にするという考え方である。
 戦後の日本企業が歩んできた発展プロセスは、リバース・イノベーションとよく似ている。変革なくして生存はありえないイノベーションの時代。日本企業の生き残りをかけた戦略として、その可能性を考えてみたい。

 多国籍企業のBOP(ボトム・オブ・ピラミッド)戦略
 先進国市場の低迷が長期化していることから、多国籍企業の多くは、新興国市場への参入を加速させている。そうなると従来の先進国市場とはまったく違った考え方や発想で、商品や販売方法を企画する必要がある。先進国市場と新興国市場とでは、購買力、嗜好性、ライフスタイル、使用環境のすべてにおいて、異なるからである。
 現在の世界の人口が70億人だとすると、その内の40億人が経済ピラミッドの底辺部を構成しているといわれている。BOP(ボトム・オブ・ピラミッド)戦略とは、そうした人達に対して、貧困の削減などの社会問題を解決する、新たなビジネスモデルとして注目を集めている。
 「コア・コンピタンス経営」(1995)で有名なC.K.プラハラード氏が提唱したBOP(「ネクスト・マーケット」)(2005)は、発展途上国の20億人という人口をグローバル経済に引き入れるためには、企業は多くのイノベーションと新しいビジネスモデル、新しい製品やサービスを生み出さなければならないと唱えている。その後の新興国の台頭とともに、企業のグローバル化において「リバース・イノベーション」が欠かせないものとなってきた。この流れを裏づける概念を先駆的に提唱したのが、プラハラード氏である。
 多国籍企業がリバース・イノベーションによって期待できる成果は、新規市場開拓、CSR(企業の社会的責任)の実現、破壊的イノベーションの機会創出と多岐に及ぶ。その中でもインドや中国などの新興国市場で、高級なグローバル商品の需要は市場全体の10%に過ぎないが、残りの90%を占める経済ピラミッドの中間層と下層の非消費者が消費者に転換すれば、グローバル企業にとってはまたとない大きなチャンスとなるはずである。

 リバース(逆流)・イノベーションとは
 リバース・イノベーションとは、「超低価格でそれなりの品質を持った製品・サービスを新興国の制約(購買力、インフラ、自然環境など)の中で開発し、その製品・サービスを途上国だけでなく、先進国にも事業展開する」ことである。つまり、先進国で始まったものがやがて新興国に普及するという、かつての一般的な流れとは逆行するわけである。
 これまでは、先進国で開発された製品・サービスを新興国の顧客の購買力に応じて、既存製品から機能を省くなどの方法がとられた。だが、この方法では新興国の経済ピラミッドの最上位の顧客のニーズを満たすことができても、中間層や最下層の顧客にはまったく手が届かない。そこで、既存製品をただ修正するのではなく、現地に入り込んで市場の制約条件をよく理解し、既存製品を手本にしながら現地のための製品開発を現地で行い、その開発製品を市場に戻す方法(マーケット・バック)がとられてきた。
 ゴビンダラジャン氏が提唱するリバース・イノベーションとは、もともとは現地のために開発した製品を、規模を拡大してグローバルに事業展開するのである。そうすることで、これまで企業が手を出せなかった先進国の小さな市場を埋めると同時に、これまで取り残されてきた未来の市場を開発することができる。つまり、「途上国で最初に生まれたイノベーションを先進国に逆流させる」という、従来の流れとまったく逆のコンセプトであり、時に大きな破壊力を生み出すとゴビンダラジャン氏は指摘している。
 例えば、ゼネラル・エレクトリック(GE)は、病院がなく医師もいない中国の農村部向けに低価格の小型超音波診断装置(Vscan)を開発し、それを今では100カ国以上の市場で販売している。所得水準も、顧客ニーズも、社会インフラもまったく異なる日本でも最初は救急車で受け入れられ、病院に通うのが困難な高齢者の往診にも良く使われるなど、形状や技術面だけでなく、中国とはまったく別の使われ方がされている。

 カニバリゼーションを超える適切な組織の構築とマインドセットが成功のポイント
 性能・品質がそこそこで超低価格という製品が登場すれば、先進国の製品開発拠点がカニバリゼーションの危機を持っても不思議ではない。カニバリゼーションとは、自社の製品・サービスが自社の他の製品・サービスを侵食(共食い)する現象のことを言うが、新興国で超低価格の製品開発を行うことへの組織的葛藤はないのだろうか。こうした問題と関連して「技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」という副題がついている「イノベーションのジレンマ」(クリステンセン、1997)は、イノベーションを求めるビジネス界に大きなインパクトを与えた。
 イノベーションのジレンマが発生する経緯を要約すると、.ぅ離戞璽轡腑鵑砲蓮⊇祥萇覆硫礎佑鮃發瓩觧続的イノベーションと、従来品の価値を破壊して新しい価値を生み出す破壊的イノベーションの2つがあるが、従来品で優位に立つ優良企業は、持続的イノベーションを重視し経済的魅力が乏しいと見られる破壊的イノベーションを軽視する傾向がある。⇒ノ百覿箸牢存顧客が価値を認めない新技術に投資できず、破壊的イノベーションによって新技術が出現したときには、既存市場は消えてしまう可能性がでてくる。G鵬的イノベーションによる製品の価値が市場で広く認められると、優良企業はその地位から転落する。また、「優良企業の優れた経営者が健全な意思決定をすることが、その企業を失敗へと導く」とクリステンセン氏は指摘している。
 こうした企業が抱えるジレンマは、もともと先進国の既存製品と新興国のリバース製品とでは、異なる市場セグメント(制約条件が違う)の製品を目指しているので、真正面からのカニバリゼーションは起こらないという。また、真の顧客ニーズに向き合うことは、イノベーション・プロセスだけでなく、新しいビジネスモデルや新しい協力関係、バリューチェーンの再構築を含めた取り組みが必要となってくる。
 では、リバース・イノベーションを成功させるにはどうしたらよいのだろうか。それは、技術力や資金力よりも、以下のような組織を適切に構築し、適切なマインドセットを醸成できるかどうかにかかっている。
 








現地チームへの権限の委譲と現地市場の重視がなにより不可欠である。
現地市場を起点にして、そこに投入する人材や資源の管理をしなければならない。
成果の指標は一つではない。現地チームの売上や利益に固執してはならない。
どの製品を開発し、どのように生産・販売活動を行うか、その権限を現地チームに与えなければならない。
現地チームが自社の資源を活用し、その支援が受けられる体制にしなければならない。
開発された製品は、現地でテストと検証を行い、その後にグローバル展開を検討しなければならない。その際に、価格の高い既存製品とのカニバリゼーションは基本的に容認する。

 日本企業はリバース・イノベーションにどう取り組むべきか
 新興国市場への出遅れ感がある日本企業だが、リバース・イノベーションへの関心が急速に高まってきている。戦後の「欧米に追いつけ、追い越せ」を合言葉に、高品質かつ規模の経済を利用して国際競争力を謳歌していた日本企業の経営システム、慣行の優位性は、90年代に入ってから米国企業の国際競争力回復によって覆された。
 それまで、一億人超の市場をうまく活用して経済成長を実現してきた一方で、日本特有の商慣習や消費者の商品に対する美意識により、海外とは異なる独特の市場がつくられてきた。その結果、日本企業は技術やサービスで独自の高度な進化を遂げることになったが、世界市場からかけ離れた「ガラパゴス化現象」が指摘され、世界市場で苦戦をしている。
 日本企業がガラパゴス現象に至った背景を整理すると、々馥發帽發ど兵繊Φ’愁法璽困寮宿福Ε機璽咼垢了埔譴存在する一方、海外では逆に品質や機能要求水準の低い市場が存在している。日本企業が国内市場の高い要求に対応している間に、国際市場では要求水準の低いレベルの製品が事実上の国際標準仕様となり、拡大発展している。コスト高の過剰品質により、新興国の中間層以下を顧客に取り込めず、世界標準から取り残されている。
 多機能の携帯電話端末や耐震技術の高い建設業、電子マネー市場における非接触ICカード、最先端技術といわれるデジタル放送などがガラパゴス現象として指摘されている。日本企業がこの現象から脱却するためには、世界の変化・多様化を日本の発展に結び付けるリバース・イノベーションへの取り組みが求められている。それには企業は、国内から新興国に経営の重心を移さなければならない。具体的には、
 

裕福な日本市場用の製品は、貧しい国で売ることはできない。
新興国では国内のビジネスモデルを革新しなければならない。
そのビジネスモデルは、貧しい国でも豊かな国でも展開可能であること。
以上のことを実現するには、前述した組織とマインドセット(考え方)を変えることが、成功への鍵となる。リバース・イノベーションは、「やるか、それとも止めるか」の選択肢の問題でない。コスト・パフォーマンスの良いものに国境はないからである。リバース・イノベーションは国際化を進める日本の企業だけでなく、引き続き国内市場に注力しようとする内需型企業にとっても、大きな影響を及ぼす可能性がある。


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