社員分類制度設計/人事考課制度設計/賃金制度設計/その他人事諸制度設計/研修・講演講師
成果主義を実現する人事考課
成果主義を実現する人事考課 成果主義を実現する人事考課/お問合せ
  MCO マネジメント・コンサルタント・オフィス  
TOPコンサルティング各種研修考課者研修企画見積書公開活動コラムリンク集サイトマップ
MCOサイト内を検索
■現場の実践知(強み)を活かして、強い組織を作る方法
 
       
2014年8月22日    2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催まで、あと6年を切った。2020年といえばピーター・F・ドラッカー氏が約20年前の1993年(「ポスト資本主義社会」)に、資本主義が知識社会に移行すると予見した年にあたる。ドラッカー氏がいう知識社会とは、資本主義におけるヒト・モノ・カネ・情報などの経営資源以上に新たな富み(価値)を生み出し、組織を効率化するのは「高度に専門化された実践知」であり、この「実践知」が「資本」の代替的な役割(生産性向上の中心をなす)を果たす社会が到来するというのである。
 このドラッカー氏の指摘を俟つまでもなく、現代社会において実践知は「イノベーションや競争優位の確立」にとって重要な戦略的資源であることはもはや共通認識になっている。ここでの実践知は、現場における個別具体的な経験の中で、他者と共感・共有・共鳴することを通じて得られる主観的な知識(言語化しにくい経験知=仕事のコツ)からスタートする(一ツ橋大学名誉教授の野中郁次郎氏は「暗黙知」と表現している)。この主観的な経験知を対話や例えを引きながら「概念化(形式知)」し、概念化した知識を組合わせ、あるいは発展・進化させていくことで(理論モデル化)、個人と組織がともに新しい「知(実践知)」を創造・獲得していくことができる。これは、イノベーションを生み出すプロセスそのものであり、このプロセスをいかに早く行い、スパイラルアップしていくかが、イノベーションを持続的に生み出す重要な鍵となる。
 そこで、現場直結のイノベーション(革新)を持続的に生み出す組織に生まれ変わるためには、どのような取り組み(組織の学習)が求められるのか、そのいくつかを紹介しよう。

 組織の学習能力を高めるトランザクティブ・メモリー
 組織の学習能力については、近年、戦略論の分野でも高い関心を集めている。組織の学習は、個人(能力開発)、チーム(職場活性)、組織全体(組織開発)という3つの観点で行われ、そのスピードは産業分野によって差があることが報告されている。
 前述したように学習は経験によってなされ、組織の生産性や効率性などが高まるが、こうした学習を促進するにはどういった取組みが有効であろうか?こうした問いに対する答えとして、組織学習の1つの側面である記憶力(経験によって学習した情報の蓄積)という観点から、「トランザクティブ・メモリー(ハーバード大学 ダニエル・ウェグナ―)」という考え方がある。これは、組織のメンバー個々が他のメンバーについて「誰が何を知っているか」を把握しておくことが重要である―という考え方である。
 現代企業は膨大な情報の中で、スピード感をもって仕事をしていかなくてはならないが、一人のメンバーが管理できる情報量には限りがある。また、それぞれのメンバーが同じ情報を共有していても効率化はおぼつかない。そもそも組織として学習することの一番のメリットは、それぞれが異なる分野の専門家として深い知識を蓄え、それを組織的に活用できるところにある。そのためには、自他ともに認める専門性を組織的に活用することが重要となる。
 だが、こうした協働体制が組織に根付くには、その組織風土や組織運営のあり方が大きく影響してくる。つまり、開放性の低い権威主義的な組織風土であったり、互いの知識へのアクセスの手段や機会(場)が限られていたのでは、個々のもつ強みを発揮させることができないのである。仕事は人と人とのつながりの中で進められることが多く、他のメンバーが各人の役割配分(実践知に応じた仕事の割当)に納得していないと、円滑に連携・補完が出来ないし、成果も上がらない。メンバー間における知識の相互活用は、チームワークの原動力でもあることから、相互理解を深める場、とりわけ直接対話によるコミュニケーションの機会を意図的にどう増やしていくかが重要な課題となってくる。

 互いのメンタルモデルを共有し克服する
 人は日々の生活や活動の中で、さまざまな体験をし、たくさんの事実に触れている。仕事やプライベートでの体験や仕事上の成功・失敗体験など、多くの体験や事実の積み重ねの中から、特に自分にとって意味のある事柄を取捨選択し、それらに個人的な意味づけをして行動している。このようにメンタルモデルとは、各人がこれまでの経験をもとに、どう判断し行動したらよいのかを頭の中に形成されるモデルのことをいう。したがってメンタルモデルは、育ってきた生活環境や文化によって無意識のうちに形成され、人の行動に大きな影響を与えることになる。例えば、地震が起きた時、貴方ならどう行動するだろうか?まずテレビをつけて情報を収集する。避難通路を確保する。火元の安全を確認する。等など、人が咄嗟にとる行動はさまざまである。これらの行動の違いは自身のメンタルモデルを適用した結果であり、認識と意思決定において重要な役割を果たしている。
 ところで多くの日本企業は、国際化(国内中心から海外へ活躍舞台を拡大・進出すること)とグローバル化(世界規模で経済活動の相互依存が進んでいるという状態の中で経営をすること)が進んでいる。世界をフィールドにビジネスを展開し、世界中の人材を求めるとなれば、おのずと人材も働き方も多様化してくる。それだけに、「多様性(ダイバーシティ)」をお互いに「受容(インクルージョン)」することで、組織全体として新たな価値を創造していく、つまり「ダイバーシティ&インクルージョン」の視点が不可欠となってくる。
 だが、わが国でのダイバーシティは「様々な人々が生き生きと働ける職場」といった理念的なものが議論の中心であり、経営トップの関与も少ない。しかし先行する米国においては、投資対効果検討書(Business Case For Diversity)によって、ダイバーシティの取り組みが、組織文化、社員の雇用、顧客との関係、創造性、生産性を改善することが確認(Bowl 2001)され、多くの経営者の信頼を得ている。また、企業の収益性と同様に、組織が環境変化に対応する上での組織変革ツールにダイバーシティはなり得ることが共通の認識とされている。それは、指揮命令型の従来のリーダーシップスタイルではなく、参加を促す、権限と情報を共有する、部下の自己認識を高める、人を活性化させる―といったリーダーシップスタイルが、人を巻き込み、能力いっぱいに力を発揮させるということが常識になっている。(Rosener 1990)
 日本においてダイバーシティの議論が盛んになったのは2000年以降からである。米国のように倫理的・社会的な議論でなく、ビジネスの問題として明確に区分して用いているのは、日本では一部の大手企業に限られている。多くは戦略的な組織変革・ビジネス上の効果といった視点ではあまり捉えられておらず、まだまだ経営トップの関与も限定的である。
 ダイバーシティを表層的な属性(国籍、性別、年齢等)だけでなく、深層のメンタルモデルの次元(特に働き方)までその対象を拡大することで、ダイバーシティが組織の成果に貢献することに気づくことができるはずである。

 ブレイン・ストーミングの別の効能
 複数の人が共にアイデア出しや問題解決に役立つ会議法にブレイン・ストーミングがある。周知の技法であるが、知られている割には、表面的な理解にとどまっているようである。簡単に活用できる技法であるから、管理技法の一つとして是非とも身につけておきたい。
 ブレイン・ストーミングは、米国の広告会社の副社長であったA・F・オズボーンによって考え出された発想と問題解決のための会議法をいう。名のごとく「ブレーン(頭脳)で問題をストーム(攻撃)する」ことで、変じて「ある問題について集団の効果を活かし、自由奔放に意見やアイデアを出す会議」の代名詞になった。日本語で訳しづらいため、ブレスト、BS等の呼び方で使う場合が多い。(以下、ブレスト表示)
 ブレストが通常の会議と異なる点は、意見やアイデアの連鎖反応を巻き起こす―集団の連想の働きを利用するもので、メンバーの意見の連鎖反応を巻き起こしながら、よいアイデアや意見を生み出していくことにある。また、会議では次の四つのルールを守ることが求められる。
  他人の意見やアイデアを批判してはならない。
  どんな意見でもよい。このルールは固定観念を破り、意見やアイデアを多角的に出させるのに役立つ.
  量が質を生むため、まず量を出すことを意識づける。
  連想の働きを活かし、他人のアイデアや意見をうまく利用する。
 この四つのルールがブレストの生命であり、会議ではこのルールを守って進めていくことになる。ただし、選択や評価、分析する問題は適さない。多角的なアイデアにより解く問題、例えば「〜するにはどうしたらよいか」といった問題がよい。抽象的でなく、できるだけ具体的な問題や現実的でメンバーに関心の高い問題がよい。
  ただしブレストは、アイデアや意見を自由に出させる方法でしかない。したがって、出された意見やアイデアを整理、統合、選択し、活用へと結びつけていかなければならない。そのためにはKJ法が、データの統合や構造化にすぐれているため、ブレストのアイデアのまとめによく活用される。

 このブレストの目的が「アイデアや意見を出す」ことなのは、多くの人の共通認識である。だが、それを超越するさらに優れた役割も証明されている。(サットン、ハーガドン 1996)
 その一つが、「誰が何を知っているか=トランザクティブ・メモリー(組織全体の記憶力)」を高める効果があるというのである。多様な実践知の組み合わせこそが、創造力の源泉であるだけに、顔を突き合わせてブレストすることで、結論に至るまでのアイデアや意見のプロセスを共有でき、さらに新しいアイデアを加えていくことができる。つまり、ブルーオーシャン戦略(チャン・キム氏 2005)での「フェアプロセス(社員が納得し、協力を得られるようにすること)」の効果をも期待できるというのである。
 ブレストの優れたもう一つの役割は、参加メンバーが組織の「価値基準・行動規範」を共有しやすいことである。ブレストでは、互いのアイデアを肯定することが尊重される。そしてこの価値基準は、「より突飛で大胆なアイデアを出す」ことを歓迎する。さらに、この行動規範はブレストの場を超えて、組織全体に浸透することが期待できる。ブレストを繰り返すほど、多様なメンバーが入り交じって同じ価値を共有し、それが日頃の業務でも意識されるようになるのである。つまり、組織メンバーがメンタルモデル(=基本となる思考体系)を共有し、これを高めやすい、という研究結果も出ている。(米トューレーン大学メリー・ウォラー 2004)
 コラムの最後に、「生き残る種というのは、最も強いものでもなければ、 最も賢いものでもない。最も変化に適応できる種が生き残るのだ。」というダーウィンの言葉でまとめとしたい。
 <このテーマに関連する資料>
 和のチームワークから役割(課題解決)重視のチームワークへ・・・チームづくりの重要性
 自律型人材育成と経験学習モデルとパイプライン・モデル
 職場の活性化と組織の成功循環モデル


ページトップへ
MCO 有限会社マネジメント・コンサルタント・オフィス
〒232-0036 横浜市南区山谷72-1-710 Tel:045-334-7680(代表) Fax:045-334-7681