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■知識・スキルのトレーニング研修から戦略実践のラーニングへ
 
       
2014年7月23日    企業の内部要因を持続的競争優位の源泉とみたてる資源ベースの戦略論(resource based view)の影響を受け、わが国でも戦略的人的資源論(S.H.R.M)や人的資本管理論(H.C.M)が隆盛である。その中の課題の一つに「人材をどのように見つけ、育て、活用していくか」が挙げられる。経営者がいくらグローバル化や成長、利益創出という事業戦略を掲げても、それを実行する高い能力を備えた人材がいなければ、絵に描いた餅で終わってしまうからである。
 従来の人材育成では、これまで組織が蓄積してきたノウハウや知識・スキルを習得させて、人材を育てていくことが、企業の競争力につながると考えられてきた。しかし、企業を取り巻く環境が大きく変化し、スピード対応が求められる現在では、単に既存の知識・スキルを習得するだけでなく、経験と省察による学習(ラーニング)によって新しい仕事のやり方を学ぶという考え方が、人事部や能力開発部門の人たちの中に広く浸透してきている。
 この考え方の重要なポイントは、学習とは職場における実践の一部であり、「学習と仕事」の間に対立は存在しないということである。つまり日常の活動そのものが、結果として個人の学習・成長につながるという考え方である。企業の人材育成のあり方が、これまでの習得・移転型から経験・参加型へとパラダイムシフトしてきた背景には、経験学習論や認知科学における状況論の台頭がある。

 求められるアンラーニング
 本来「学び」とは、自ら変わり続ける営みであり、まして現代のグローバル環境のように市場の急激な変化や想定外の事態が続く状況下では、長い経験によって熟達したスキルが、ある日突然に時代遅れになることは珍しくない。また、ベテランとか熟達者という概念そのものが環境適応への足枷となって、重要な判断ミスや対応の遅れを招く恐れがある。
 日本企業の強みとされてきたO.J.Tは、もっぱら新入社員や若手社員が対象であり、一人前に成長した中堅や部下を持つ立場になったベテランがその先、何をどう学んでいくかという問題は、残念ながら切実には捉えられてはいない。だが、一人前になってもベテランであっても、学ぶ必要がなくなるわけではない。ここにアンラーニングが注目される要因がある。
 個人や組織が激しい環境変化に適応し、継続的に成長していくためには、これまで学んできた知識や価値観を批判的に振り返る「リフレクション(内省)」を通じて、学習棄却(アンラーニング)と新たな学習(アクション・ラーニング)という、二種類の相反する「学びのプロセス・サイクル」を廻していくことが不可欠である。特定分野だけに固執し、ひたすら熟達だけを目指すのではなく、硬直してしまった自らの思考様式や行動様式をいかに解きほぐしていくか。「学びのほぐし」の視点が、これからのビジネスに必要な「大人の学び」に結びつくのである。
 組織学習論の分野では、古い知識や価値観を棄て去り、そのときの環境に相応しい新しいものに学び直していくことをアンラーニングという。このアンラーニングを実現する鍵は「自分が変わらなければならないこと」を受容することである。それには職場以外のネットワークがとても重要になる。例えば、地域ボランティアに参加するなどして、自分の職場における価値観、考え方を改めて見つめ直す「越境学習」などが有効である。

 注目されるアクション・ラーニング
 アクション・ラーニングとは、実際の職場課題についてチームで検討し→解決のための仮説と展開プロセスを構築し(オフサイト)→それを現場で実践し(オンサイト)→チームでの振り返りによって検証し(オフサイト)→新たな解決策を生み出す―というサイクルを通して参加者と組織(職場)の変革能力と認知能力を高めていく学習方法のことをいう。
 1930年代に英国のレバンス博士(物理学者)がアクション・ラーニングを考案し、米国でもリーダーシップ開発手法として注目を集め、現在多くの企業で利用されている。アクション・ラーニングによる効果は、「問題解決」と「個人の能力開発」、「組織開発」の三つを同時に行うことができることから「学習する組織のDNA」と表現されることがある。そのアプローチは、個人とチームの振り返り(リフレクション)を重視し、チームでの話し合いは基本的に「質問」をベースにして行われる。ここでの学習コーチ(リーダー)の役割は、チームとしての振り返りを促し、問題解決よりも学習を重視した介入を行うことになる。
 アクション・ラーニングとトレーニングとの決定的違いは、インプットにフォーカスするのではなく、アウトプットにフォーカスするということである。アウトプットとは、環境変化を明確に認識し、有効な行動を生み出し、実際に成し遂げる実行力のことである。つまり、良い業績や良い数字を生み出すための行動変化こそがアウトプットである。従来のトレーニングでは、どのような訓練を行うかに力点が置かれ、しかも知識の獲得が目的であることから、行動変化を測定する必要はなかった。しかし、戦略の実行・実現では単に知識の豊富な人材だけでなく、環境変化に適応した人材が求められる。そして行動変化が業績向上につながらなければ意味がない。
 行動変化ということではO.J.Tもねらいは同じだが、実際には「背中を見せて育てる」「暗黙のうちに伝える」ところで留まっていて、恐ろしく非効率で非経済な、知識の移転スピードの遅い仕組みである。とても日本以外で汎用的に使える手段ではない。長期雇用が通用しない世界では、教わる側の社員が辞めることだけでなく、教える側の社員が辞めてしまうことを心配しなければならない。手取り足取りマンツーマンで教えていたのでは、とても知識の移転スピードが、社員の離職率に追いつかない。離職率を下げる努力はもちろん大切だが、個人の持っている知識やアイディアを吸い上げて、これを素早く仕事に反映する手法が必要になる。労働の流動化が進むこれからの社会では、悠長なO.J.Tは通用しない。実践のラーニングをベースとした人材育成が注目されている。

 行動変化の計測はどこまで可能か
 行動変化の計測は、それほど難しく考える必要はない。ラーニング実施前の行動と実施後の行動を比較するだけだ。例えば、営業部門の販売促進についても「既存顧客の維持率」「新規顧客の開拓件数(率)」「顧客満足度」などの指標があるので計測は可能である。こうした指標を上げるための行動(例えば訪問件数など)を規定し、その行動を促すような学習的介入を行い、最終的にどれくらい改善されたかを見ればよい。
 事務・企画や研究・開発部門などの比較的曖昧なテーマについても計測は可能である。例えば、「仕事の改善・合理化」の場合を考えてみよう。仕事の改善・合理化は、主に四つの視点から成り立っている。第一は、モチベーションであり、本人が仕事の改善・合理に関わっていこうとする"やる気"を持っているかである。二点目の視点は、知識である。仕事の改善・合理化に取り組むために知っておくべき知識を十分に持ち合わせているかという問題である。そして第三点が、自覚する力である。現在の自分が持っているスキルが仕事の改善・合理化に十分でない場合、一歩引いてそれに気づくことができる認識力である。他の人のやり方や別の方法が良いことに気づき、必要に応じて取り入れていく認知力でもある。四点目は、行動である。仕事の改善・合理化の目的に対する感受性を持ったうえで、その目的に則したやり方に合わせて自分の行動を律する力である。企業として目指すのは、この四点目の行動であり、互いの立場の違いを乗り越え、それに相応しい行動ができる人材を見出したいのである。
 この四つの視点をそれぞれ計測することは可能である。モチベーションは高いか低いか、あるいは以前より向上したか。知識はどの程度まで高まっているか、その場その場の状況は自覚できているかなど、具体的な行動をベースにして評価することはできる。そして、部下を育成する際に確認すべきは、動機レベル(執務態度)の問題か、知識レベルの問題か、自覚レベルの問題かということである。それを見極めたうえで、必要なラーニング(支援)を提供し、成果を評価していくのである。人事考課によって、ラーニング効果を明らかにすることは、今後のよりよいラーニングの提供につながるということである。

 ラーニングを成功させるポイントは何か
 企業内学習(ラーニング)は、人事部門あるいは現場だけが努力しても上手くいくものではない。まずは当の本人が学ぶことを約束し、自分の殻を破る痛みを引き受ける覚悟が必要である。ラーニングに参加すれば何とかしてもらえるといった、受け身の姿勢では決して学ぶことはできない。また、職場リーダーは、部下の成長は自分の責任であることを自覚することである。
 そして人事部門は、個人と職場リーダーの間に立ち、効果的なラーニングを行うためのあらゆる価値を提供しなければならない。社員の成長やモチベーションを向上する学習の場を提供し、それらを通じて事業戦略に必要な優秀な人材のプール化を自らの目標にすべきである。
 三者がそれぞれに責任を果たして初めて、他社が容易に真似できない競争優位の状況を作り出すことができるのである。それにはこれからの人事部門の重点は次の三つにまとめられる。
 第一に戦略の形成・解決を担う経営人材の要件定義、調達、育成、定着を図る「戦略人事」のマネジメント強化。第二に、戦略に連動して創り出される職務、人材、報酬の最適化を図る「戦略人事」のマネジメント。具体的にはインセンティブ・システムの再設計。第三に、戦略の策定と推進に貢献する戦略部門としての「人事スタッフの役割変更」である。
 実践のラーニングが、個人、職場、人事部門の三者の共通言語となり、その結果戦略推進の行動変化が生まれ、企業全体のパフォーマンスが上がる―これが理想の状態である。卓越した先進企業がまさに取り組み始めていることである。

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