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■人手不足時代の新人事制度・・・人材ポートフォリオ
       
2014年5月23日    日本経済の景気回復を背景に、人手不足が深刻な状況になってきている。昨年11月に6年1カ月ぶりに1倍を回復した有効求人倍率は、その後5ヵ月連続で求人数が求職者数を上回り、今年3月は1.07倍まで上昇している。それに伴って、外食、小売・流通、建設、IT関連など、人材を確保できない分野が広がっている。労働集約型の外食、小売・流通業では、すでに時給アップや非正規社員の正社員化などの対応を行っている。だが、それでも人員不足が原因で、営業時間の短縮や店舗休業や倒産にまで追い込まれる事態となっている。
 しかし、急速に少子高齢化が進む日本では、景気回復だけが人手不足の原因ではない。数年前に60歳となる「団塊の世代」の大量定年退職をめぐる「2007年問題」が話題になった。社会の支え手である勤労世代の急減は税収や社会保障制度、経済への影響だけでなく、あらゆる分野で厳しい状況を生み出す。2007年には「団塊の世代」が60歳(1947年生まれ)に到達することから、大量の定年退職者の発生が予想され、これにより労働力の減少や企業内の技術・ノウハウの継承の断絶など、様々な問題が生じるのではないかと懸念された。結果は、リーマンショックによる世界同時不況と高齢者雇用安定法による就業機会の拡大により、人手不足が顕在化することはなかった。だが、総務省の人口動態調査によると、昨年10月時点の生産年齢人口は初めて8000万人を割り込み、過去最大の縮小幅となっている。当時に懸念された急激な労働力の減少は回避できたが、底流では確実に人手不足経済化が進んでいたのである。
 長引く不況とデフレの中で、多くの日本企業は若くて元気な労働力が豊富にあることを前提に、人件費を抑え低価格のデフレ型商品を提供し、業績を伸ばす企業が目立った。しかし、今後の少子高齢化が進めば、ますます若い労働力は貴重になる。安い賃金をあてにしたプロダクト型のビジネスモデルは通用しなくなってくる。企業は教育に力を入れ、社員のスキルを活かして付加価値の高い新商品を次々に提供していく、顧客価値創造型のビジネスモデルへの変革が喫緊の経営課題になっている。

 求められているのは人事の柔軟性
 バブル経済の崩壊後、業績が悪化した日本の企業は、賃金が低く雇用調整もしやすい非正規社員を増やしてきた。それに伴って、非正規社員が受け持つ職務の範囲が広がり、中には正社員と同様の働きをする人も増えている。企業は、正社員を時間当たり賃金の低い非正規社員に置き換えて、人件費を引き下げてきた。こうした正社員から非正規社員に置き換えていく動きは、労働集約型の小売業や流通業等に限らず、様々な分野でも盛んに行われてきた。
 ところで、わが国では「成果主義のねらい」を人件費の抑制・削減と考えている人が多い。だが、決してそれだけではない。企業が厳しい国際競争に打ち勝っていくためには、できるだけ柔軟性のある雇用と労働、柔軟な処遇、そして柔軟な働き方を可能にする人事管理が求められる。この「柔軟性」こそが、成果主義に期待されている大きな役割である。しかし、人事管理の柔軟性を確保するためのアプローチの方法は一つではなく、それぞれの国の労働慣行や労使関係によって当然に異なってくる。すなわち、柔軟性を確保するための人事労務上の課題は国によって異なり、取り組むべき力点も変わってくるのである。
 やや専門的になるが、企業の競争力を高めていくために、労働力の柔軟性(フレキシブル化)を確保していくための考え方として、英国のアトキンソンの論文(1985)が参考になる。この論文でアトキンソンは、企業が環境変化への適応力を高めていくためには、人事労務において「数量的柔軟性」「金銭的柔軟性」「機能的柔軟性」の三つの柔軟性を高めなければならないと提唱している。(成果主義については、成果主義人事制度Q&Aを参照いただきたい)
 数量的柔軟性とは、雇用労働量(雇用人数と労働時間数)を必要に応じて速やかに増減することができるかどうかということである。具体的には、数量的柔軟性は雇用が安定した正規社員と雇用調整が容易な非正規社員に分かれ、後者の比率を上げれば柔軟性は高まる。多くの日本企業が非正規社員を増加しているが、この考え方に基づいているものと思われる。
 次の金銭的柔軟性とは、賃金制度が企業や個人の業績に応じて変化する柔軟性を持っているかということである。金銭的柔軟性が高いとされているのは、能率給、業績給、職能給などであり、厳格な職務給(米国ニューディール型)や年功賃金は柔軟性が低いといえる。
 さらに機能的柔軟性とは、社員がいろいろな仕事ができるように経験を積み、訓練され、異動可能かどうかということである。日本企業の場合、配置替えがしばしば行われ、多能化教育もよく行われ、機能的柔軟性は高いと指摘している。
 アトキンソンは、三つの側面のいずれも柔軟性の高い企業を「フレキシブルな企業」と呼び、競争力の強い企業であるといっている。

 進む雇用(形態)多様化の課題
 しかし、柔軟な労働力とされている非正規社員の仕事は、比較的単純で定型化していて、賃金は一律である。それに対して正社員の仕事は複雑で、成果の個人差も大きいことから機能的柔軟性は高いが、反面、企業は簡単に解雇できないので数量的柔軟性は低くなる。
 つまり、機能的柔軟性と数量的柔軟性は相反する関係にあり、機能的柔軟性と金銭的柔軟性は相互に助長する関係にある。また、数量的柔軟性と金銭的柔軟性は相反する関係にある。したがって、完全に柔軟な企業は存在しないことになる。
 バブル崩壊後の日本企業は、グローバル競争を勝ち抜くために、非正規社員への依存強化(数量的柔軟性)と人件費コスト削減のために成果主義(金銭的柔軟性)の導入を推し進めてきた。確かに、企業の損益分岐点は下がり最高益を更新する企業も出てきた。しかしながら、実態としては必ずしも成功しているわけではない。正社員以外の多様な人材(非正規社員や外部労働市場の活用)が増えたことで、社員の忠誠心(エンゲージメント)は薄れ、優秀な人材が流出するなどから、かえって品質クレームの増加や生産性の低下を招く企業も見られる。したがって、過度に人材活用の多様化に走った多くの企業は、今後の景気回復の中で、新たな課題を抱え、雇用管理や雇用戦略の見直しに直面するものと思われる。
 では、社員の構成(区分)を合理的に決めるにはどうしたらよいのだろうか。その答えは、
正規社員と非正規社員との二分化を止めることである。一旦雇用契約のある人全員を社員に置き換え、契約期間や処遇体系によっていくつかのコース(人材タイプ)に分けるのである。
その上で、有期雇用でも数年にわたって働き続けること(契約更新)を期待する人には、経験・能力の向上によって賃金が上がる仕組み(役割等級制度など)を取り入れる。
雇用形態の変更(コース変更)をできるだけ柔軟にして、希望者には機会を提供する。
将来経営幹部になることを期待されている管理職コース(無期雇用の正規社員)と専門職コース(無期雇用の正規社員と有期雇用の非正規社員)とに再設計する。
 非正規社員に対して高い業績を期待するためには、モチベーションを向上させる制度の導入が欠かせない。正規社員でないことを理由に、賃金を低くしたのでは人材確保も人材活用も進まず、人事管理を硬直させることになる。なお、現在の企業人事部門は、主に正規社員の採用や処遇のみを所管し、非正規社員については担当職務の実態さえ把握していないことが多い。少なくとも全社部門の業務や職務とそれに適する雇用形態との関係を把握していないと、戦略人事の役割を果たしていくことはできない。

 人材ポートフォリオの導入
 企業内の非正規社員が占める割合は、全雇用者(役員を除く)の38.1%(総務省「平成24年就業構造基本調査」)までに増加しているが、必ずしも戦略的な行動の結果とは言いがたい。
 非正規社員が増加するという傾向は、良いか、悪いかは別にして、人件費削減のために、なし崩し的に行ってきたという企業が多く、数量的柔軟性と金銭的柔軟性を維持したい企業にとっては、今後も止めようのない流れである。一方、非正規社員の増加は、組織力の低下やマネジメントの難しさ(職場運営が困難)という課題を企業にもたらしている。そこで、まず現状における非正規社員化の課題を整理すると、次の四点が挙げられる。
派遣や業務委託など、人件費に計上されない経費の増加により、削減効果が明確でない。
正規・非正規の業務分担が明確でないため、同じ仕事を担当しているケースが混在している(非正規社員の処遇上の不満)。
非正規社員にも、命令・統制のマネジメントを適用しているケースが多く、モチベーションの低下だけでなく、職場活性にもマイナスに作用している(生産性の低下)。
情報の共有・管理や雇用形態差別の問題などのノウハウが欠如しているため、適切なリスクマネジメントができていない(ネットによる業務妨害・情報漏えいや雇用条件格差等)。
 これらの課題解決にしっかりと取り組み、多様な人材を活用できるよう、マネジメントを強化することが求められている。雇用形態の差別は有り得ないとされながらも、実際にはさまざまな差別は存在している。パートタイム労働法の改正や労働人口が減少していくなか、過去の固定概念を払拭して、多様性を活かし職場を活性化する新たなマネジメントを創り出していく時期にきている。
 人材ポートフォリオは、雇用する人材を時間軸(有期と無期)や仕事軸(定型と創造)あるいは企業の特殊性(固有技能等)や仕事のチームワーク(分業型と自己完結型)等を、縦軸と横軸に置き、それぞれの度合い(尺度)に応じてできた四つのエリアに、例えば正規社員、契約社員、パート社員といった具合に配置する。このように技能や仕事の質、特殊性に応じて人材区分を設ければ、正社員の細分化にも合理的な裏づけを持たせることが可能になる。
 人材ポートフォリオの考え方で人材の区分をしていけば、当然に人材区分ごとに育成・評価・処遇の各制度も異なってくる。確かに人事管理は複雑になるが、経営の柔軟性を高めて環境変化への対応力を向上していくためには、企業はこれに取り組まざるを得ない。
すでに日本の雇用システムは、内部労働市場型から外部混合市場型へ転換しつつある。このコラムが、今後の議論のたたき台になればと考え紹介した。

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 戦略を実行し実現する成果主義人事Q&A


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