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■金銭格差の成果主義から納得性と動機づけの成果主義へ
       
2014年2月27日    開会式セレモニーでは、なぜか五大陸を意味する(五輪マーク)赤い雪の結晶だけが開かなかったソチ冬季五輪が閉幕した。閉幕式では、華麗なパフォーマンスが繰り広げられ、花火が打ち上げられ、今大会のハイライトが映像で流された。日本選手団は長野大会の10個に次ぐ8個のメダルを獲得したが、中でもショートプログラムで16位と大きく出遅れた女子フィギュアスケートの浅田選手の会心のフリー演技には、メダル競争とは別次元の感動を覚えた。日本選手の活躍は連日生中継されていたが、採点競技の多い冬季五輪は、あまりメダルにこだわって観ていると後味が悪くなる。五輪の商業主義はもはや止めようもなく、開催するたびに審判の不正やジャッジへの抗議が相次ぎ、競技結果への不振を招いている。五輪隆盛の中でスポーツは、ルールとマナーによる「公正性」を望むことは無理なのだろうか。
 公正性が求められるのはスポーツの世界だけではない。近年は多くの企業や組織においても、公正を確保するために格差の小さい「公平性(年功基準)」から、組織や企業への貢献に応じて賃金等を配分する「公正性(成果基準)」の考え方へと大きくシフトしてきている。だが、スポーツと同様に公正性を確保することはそれほど容易ではない。そのため、基準やルールの限界がもたらす不公平に対して、どう対応していくかの議論が盛んになってきている。つまり、「結果の公正性」を確立することが難しいことを前提として、社員が目標設定や評価に部分的に参加したり、苦情を申し立てる仕組みなど、企業レベルでの「手続きの公正性」を活用して救済を行う仕組みを導入することが、個人のモチベーションと企業業績との関連で重要であることが認識されてきている。

 雇用管理はインセンティブ(格差)とモチベーション(平等)のバランスが大切
 多様な雇用形態や短期的成果主義の普及・定着等により、公正や公平の議論が多くなってきている。背景には、グローバリゼーション(資本やモノの移動の自由化)の進展によって世界的労働市場ができあがり、先進国には常に賃金低下圧力(非正規雇用の増加を含む)がかかっている。
 年功制といわれた雇用管理においても、賃金や雇用機会、教育機会などが平等に行われてきたわけではない。学歴、経験や性別等によって格差は存在した。しかし重要なことは、現在の日本企業における賃金格差や雇用、教育機会の不平等の拡大が納得できるかどうかではなく、組織における「公平処遇(格差)の原則」に関する意識や考え方に変化が起きていることである。公平の原則が変化するとき、組織や社会には混乱が起こりやすい。というのは、そこには何をもって公平とするのか(格差要因や格差項目)の判断が大きく分かれてくるからである。
 例えば成果・実績主義においても、何が"成果・実績"なのかを決定するのは難しい。なぜなら、なにが"成果・実績"なのかは、"成果・実績"を判断する基準に依存するし、その基準が変化するとき、そこには何を"成果・実績"とするかについての違いが大きくなるからである。したがって、何を公平だと考え、どういう状況が平等であるかの判断は、どういう原理をそこにおくのかに依存するのである。
 従来のわが国の雇用管理においては、社員の処遇について2つの原則(労働対価と生活保障)を組み合わせてきた。その1つは「公平の原則」である。つまり、経験や能力・技術などの何らかの基準にしたがって労働力の価値評価を行い、その結果に応じて賃金や教育等を分配するという考え方である。したがって、能力主義の場合、実務経験がどんなに豊富であっても、企業が必要とする能力を備えていなければ、それがどんなに不公平な存在であっても、"公正な不公平"として社員に許容されてきたのである。なぜなら社員から見ても、効率と公平を最もよくバランスする原則だと思えたからである。
 もう1つは「平等の原則」の併用である。つまり、同じ年齢や経験年数であれば処遇に差をつけず、平等に分配するという原則である。ここでの処遇とは、単に賃金や賞与だけでなく、教育の機会や福利厚生など広い範囲が含まれる。短期的な成果主義の普及・定着によって、個人の組織へのコミットメントやチームワークを重視する分配(組織全体の生産性=平等)から、公平の原則に基づく分配(個人の貢献や雇用形態の違い)のウエイトが高まった。だが、個人レベルの貢献だけでは、チームワークや育成の論理と矛盾が生じ、結果としての不平等が公平ではなくなり、何らかの是正が求められてくる。
 いずれにしても、公平を確立するためには、なんらかの形で公平の原則と平等の原則のバランスを考えることが必要であり、このバランスが大きく崩れた状況を放置すると、経営上の計り知れぬダメージ(製品への農薬混入等)を被ることにもなりかねない。

 公平(公正)の難しさと不公平を解消する動機づけ(公平理論)
 近年の企業は短期的成果主義(人件費の下方硬直性の解消)の導入によって、公正の判断基準や公正処遇の原則が、より公平(大きな格差)に移行してきた。また、“頑張った人にはより多く、そうでない人にもそれなりに”という成果主義のキャッチフレーズは、単純で合意可能に思えるし、グローバル競争への社会的要請ともマッチしている。だが、公平の原則は考え方はシンプルでも、実際の運用においては極めて困難な判断を伴う。そもそも公平という言葉には幾つもの落とし穴がある。ここではアダムスの「公平理論(equity theory)」で、問題点を明らかにしてみよう。
 人は「自分が仕事への取り組み(input)に見合う報酬(outcome)を得たい」と願うが、この仕事への取り組みと報酬との比が、他者の比と同等の場合(Op/Ip=Oa/Ia)を公平(equity)といい、等しくない場合(Op/Ip>Oa/Ia、Op/Ip<OA/Ia)を不公平(inequity)と呼ぶ。後者の不公平の程度が大きいほど人は不愉快になり、それを解消しようと動機づけられると指摘している。(Ip=自己の投入量、Op=自己の報酬、Ia=他者の投入量、Oa=他者の報酬)
 不公平には過不足の二つがあるが、不公平を解消するための方策には、以下の五つのパターンがある。
(1) 自己の投入量を少なくし、あまり熱心に仕事をしない。
(2) 報酬を大きくするために、会社の備品等を家に持ち帰る。
(3) 自分と他人の投入量または報酬に対する認識を変えるために、福利厚生や教育機会等も含める。
(4) 比較する対象を別の他人に変える。
(5) 比較することを止めて退職する。
 このように公平理論は金銭的な報酬だけでなく、仕事への投入量やさまざまな報酬要素をあてはめることによって、多様な人間行動を説明することができるが、投入と報酬に何を取り上げ、それを比較できるように数値化することには困難が伴う。特に、|を比較対象とするか、何を基準に個人の貢献を評価するのか、2燭鯤鷭靴塙佑┐襪、これら三点の合意形成ができていないと、公平性が確保できずに組織内に混乱を招きやすい。

 公平理論を補完する手続き(過程)の公正性
 アダムスの公平理論(1965年)はシンプルで分かり易いが、何が公平かは個々人の判断に依存する。それだけに第三者が決定するのは難しく、また報酬要素にも多様な要因(例えば、挑戦しがいのある仕事の達成感や将来に向けた自己のキャリアアップ等)が考慮されなければならない。総論として公平理論は理解できても、各論では公平性を確立することは困難だからである。
 そこで、分配方針として公平理論を維持しつつ、これを補完するために仕事のサイクル(P・D・C・A)への社員の参加やフィードバックや事後的な苦情処理の機会を提供することで、公正を回復するという「手続きの公正性」の考え方へと移行してきている。つまり、評価基準の公開や自己評価やフィードバック面接などを整備し、こうした仕組みを利用することで、補完的に組織の公正性を確保するのである。
 成果主義の導入や雇用の多様化によって、個人間での評価や処遇などの格差が大きくなり、また意識や価値観の変化により公平原則の新たな合意形成が必要となっているのである。その際の重要な問題として、金銭的報酬だけに依存せず、非金銭的報酬を含めてどう納得感を高めていくかが課題となる。なお非金銭的報酬は、前述したように一定の傾向はあるが人によって異なり、同じ人でも状況によって異なってくることから、どういう施策を考えるかが重要なポイントとなる。そのなかで現在行われている議論の根幹は、二つのポイントに絞られる。一つは、どの報酬を平等に分配し、どの報酬を公平に分配するかの議論であり、もう一つは公平原則のもたらす不平等をどこまでどう是正していくかである。前者は主に"機会の平等"と"結果の公正"の議論であり、後者は公平による不公平を"手続きの公正性"による是正方法の議論である。
 非金銭的報酬には、仕事そのもののやりがいや面白さ、上司や同僚、顧客からの称賛、職場環境・人間関係上の働きやすさなどさまざまなものがある。これらの報酬は金銭的報酬に比べてコストはあまりかからず、しかも社員のやる気を高めることができる。つまり、企業からするとコストパフォーマンス(費用対効果)の高い報酬といえる。仕事の与え方によっても仕事のやりがいや面白さは高まる。上司の配慮、工夫が必要だがコストはほとんどかからない。上司・同僚からの労い(ねぎらい)や称賛の言葉、顧客からの感謝の言葉も仕事へのやる気(モチベーション)を大きく高める。また、非金銭的報酬は社員の定着にも大きな効果がある。非金銭的報酬制度をうまく運用し、社員満足度(ES:Employee Satisfaction)が高い企業は社員の定着率も高いという調査結果もある。
 これからの時代、社員に報いることのできる企業だけが勝ち残っていけることは確かで、その報酬は金銭的報酬だけではない。金銭以外の報酬(非金銭的報酬)を活用して「望ましい行動」を増やし、確実に業績につなげていくことができるかどうかが、経営者に問われている。成長する企業は「厳しさ」と「温かさ」のバランスが保たれている。企業は今こそお金に頼るのではなく、社員に魅力的な報酬を与えることを、真剣に考えることが必要ではないだろうか。


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