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■好調な中間決算で来年の春闘(ベア)に期待が高まる
       
2013年11月24日    今年の暦も残り少なくなってきたが、今月は大手企業の中間決算発表が続いた。アベノミックス政策による円安・株高が追い風となって、自動車などの輸出関連企業は今期3月期決算の業績予測を上方修正する企業が相次いでいる。早くも業績が好調な企業からは、来年春闘での賃上げに前向きな発言も出始めているが、今後は好業績の企業が賃金の引き上げを行い、政策頼みの景気回復から脱却できるかが焦点となりそうだ。
 今年に入り、わが国の景気は持ち直しに転じているが、過去の持ち直し局面と比べ、個人消費の寄与度が大きくなっているだけに(GDP速報)、引き続き個人消費が上向きのトレンドを維持するためには、雇用の拡大とともに賃金の上昇が鍵となってくる。とくに非正規雇用の比率が近年上昇傾向にあるだけに、賞与への業績反映だけでなく、所定内給与での賃上げが期待されるところである。
 そこで、賃金の引き上げを意味する「ベース・アップ(ベア)」についての基本的考え方を整理してみたい。

 公正に賃金を決めるための基準(個別賃金表)
 ベース・アップのベースとは、賃金表のことであって、決して平均賃金のことをいうのではない。わが国では、企業の支払い能力に応じて、定昇込み平均でいくら上げるかをまず決め、これを各個人に配分するという形で、一人ひとりの賃金を決めてきた。年功的(年齢、勤続、性別)に各人の賃金を決めるのであれば、このようなやり方でも通用するが、仕事や成果(役割)に応じて賃金を決めていくのであれば、このような大ざっぱな配分方式では、公正に賃金を決めていくことはできない。そもそも賃金とは、労働または労働力の銘柄別の対価であるから、前もって銘柄ごとの賃金表(これを個別賃金という)をきちっと決めておき、これに基づいて各人の賃金を決めるようにしたい。
 ここ数年、厳しい経営状況の中で一部の経営者からは定昇もベアも区分されないような発言が繰り返し聞かれたが、仕事や成果に応じた賃金表を作っておけば、賃金を公正に決めることができる。各人の賃金を決めるベースとなる賃金表を書き替えるのがベース・アップ(ベア)であり、この賃金表の中で各人が、習熟度を高めていくことによって賃金が上がるのが定期昇給(定昇)である。
 ひるがえってわが国の従来の賃金は、初任給から始まって年々の昇給をこれに積み上げていくという昇給方式をベースにしてきた(これを総合決定給という)。したがって、こういう仕事をしているからいくらといったような、賃率概念が乏しいのが一般的であった。そのために、定昇とベアの区分を難しくしたり、非正規雇用者や中途採用者の賃金決定や、物価上昇・生産性向上に伴う賃金改定のあり方や、さらには個人間の賃金のゆがみの修正を恣意的なものにし、賃金の決定基準を結局あいまいなものにしてきた。
 賃金をめぐる環境情勢が変化に富んだものであればあるほど、バランスのとれた公正な個別賃金を確実に維持していく重要性は高まっている。それには、昇給表ではなく、どうしても賃金表を設定しておかなければならない。賃金表をもとにして、毎年の定昇やベース・アップをはじめ、さまざまの賃金調整をしていくことが必要なのである。

 ベアと定昇の違い
 前述したように、ベアとは賃金表の引き上げ、つまり賃金表の改定という意味である。一方、労働者は仕事を通じて年々成長する。労働者が成長すれば当然、賃金表の中で上方へ移動していかなければならない。これが定昇である。定昇は労働者の成長を受け止めるものであり、ベアは日本経済や企業の成長を受け止めるものである。これらは、まったく別のものであるから、これを混同した賃上げをしないようにすることが肝心である。
 定昇は賃金表を設定した段階において、毎年どれだけの定昇が実施されるかは、労使の間ですでに決められた約束ごとであるから、それはその都度交渉されるのではなく、ルールに従って実施されるものである。つまり定昇は制度として賃金表に従って行われるもので、毎年その都度交渉するものでない。一方、生産性向上に伴う賃金の引き上げや、物価上昇に伴う賃金改定は、あくまでもベアという形で実施される。また、初任給上昇に伴う賃金調整もベアの問題であるし、賃金のゆがみの是正もベアを通して行われるべきものである。したがって、ベアは交渉によって決まることになる。しかし、賃金表を持たない場合、定昇とベアの区分はあいまいになる。いわゆる定昇込みで平均いくら上げるかという形でベア交渉が行われ、妥結した賃上げ額を、事後的に定昇いくら、ベア分いくらというように政策的に配分する場合は定昇は無意味となってくる。

 定昇とベアの関連について
 次に、定昇とベアとの関連についても触れてみよう。すでに述べたように、ベアとは賃金表改定のことであり、この賃金表の改定に伴って、一般的に定昇は大きくなる。なぜならば、ベアの配分には、定額配分(初号賃金の修正)と定率配分(定昇ピッチの修正)の二つがあり、定額配分は賃金カーブをねかせ、定率配分は額的には立てることになる。つまり、ベアの定率是正分だけは賃金カーブの角度を増やすことになるから、ベア実施後の定昇額は定率分だけ増えることになる。このように定昇額はベアの定率分だけ増加することになるが、退職金などへの跳ね返りを恐れて、賃金表を改定せずに、加給の増額を行う企業も多く見られる。こうしたことは定昇額を不当に低くし、昇給制度そのものを意味のないものにしてしまうことに十分留意する必要がある。
 また賃金表を書き直さずに、全員の号俸をいくつか先に進めるといった形もよく見られる便法である。いわゆる定昇の形でベアをすませるのである。このような定昇によってベアの肩代わりを行うとか、加給方式をとるなどすると、個別賃金のゆがみが大きくなり、そこから賃金に対する不満も生じかねない。賃金表を書き直すと、それによって賞与が膨れ上がったり、退職金が膨れ上がったりするから、書き直すのはやめるといった考え方は現実的には多いが、退職金や賞与自体が膨れ上がることを別の形で防いでいくのが本筋である。
 以上はあくまでも現在の賃金の個人間のバランスと、賃金表自体が公正な状態にあることを前提としたものである。実際には、同業他社に比べて賃金が大きく遅れている場合もあれば、また賃金表の現状が大きくゆがんでいて、修正を必要とする場合もある。そのような場合は、賃金調整(是正)にベアの多くを使うことになるのはいうまでもない。

 賃金上昇は期待できるか
 厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると1997年以降、わが国の賃金は下がり続けている。97年の賃金を100とすると、2013年4〜6月期の賃金は約12%低下している。その理由の一つは、正規社員の賞与を通じた賃金の引き下げである。わが国では、年収に占める賞与の割合が高く、企業は業績を賞与に反映させることで賃金の調整を行ってきた。
 そしてもう一つの理由が、非正規社員比率の増加である。90年代半ばには5人に1人が非正規社員だったのに対し、現在は3人に1人以上が非正規社員となっている。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、2012年時点で非正規社員の賃金は正規社員の約62%にとどまっている。このように、賃金が低い非正規社員が増えたことが、労働者全体の賃金を低下させる要因となっている。
 デフレ経済からの脱却と雇用・所得の拡大を優先課題とする安倍政権が、経済界に対して異例の賃上げ要請を行っていることで、来年の春闘は今年以上に期待が高まっている。はたして、賃金は上昇に転じていくだろうか。賃金上昇の前提といわれる労働需給(日銀短観)は、すでに今年3月からマイナス1ポイント(全規模・全産業)と不足超過となり、リーマン・ショック後続いていた雇用過剰感が初めて解消している。日銀短観の9月調査では、遅れていた大企業・全産業も不足超過に転じ、全規模・全産業の雇用人員判断DI(人員過剰企業割合−不足企業割合)は、マイナス5ポイントまで拡大している。
 問題は労働需給が逼迫している割に賃金に上昇の兆しが見られないことである。これは現時点での雇用増に寄与している業種が、医療・福祉、生活関連サービス・娯楽、宿泊・飲食サービスなど賃金水準の低い業種に集中しているためである。今後、中間決算での業績回復が続けば、製造業など賃金水準の高い業種でも労働需要が増加してくることが期待される。そうなれば、低賃金業種は人員の確保が難しくなり、賃上げが促されることになる。つまり、今後の賃金が上昇するかどうかは、人手不足・人員確保の動きが幅広い業種に広がっていくかどうかにかかっているといえる。
 そこで、労働需給に併せて所定外労働時間の動きを確認してみる。所定外労働時間の増減は、雇用調整の重要な手段であり、景気動向と密接に関連している。景気拡張局面の初期では、所定労働時間が増加し、その後次第に雇用者数が増加する。このように所定労働時間の増減は、雇用調整の川上に位置し、雇用者数や賃金の増減を通じた調整に先行する性質を持っている。「毎月勤労統計調査(9月確報)」では、4月以降調査産業計がプラスとなり、製造業も7月以降プラスに転じている。過去の推移を見ると、所定外労働時間の増加が雇用者数の増加へ、雇用者数の増加が一人当たり賃金の上昇に結びつく状況が窺える。
 以上、賃金引き上げの条件は整いつつあるが、はたして来年春闘にベアを実施する企業はどこまで拡がるだろうか。期待は高まるばかりであるが・・・・。


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