社員分類制度設計/人事考課制度設計/賃金制度設計/その他人事諸制度設計/研修・講演講師
成果主義を実現する人事考課
成果主義を実現する人事考課 成果主義を実現する人事考課/お問合せ
  MCO マネジメント・コンサルタント・オフィス  
TOPコンサルティング各種研修考課者研修企画見積書公開活動コラムリンク集サイトマップ
MCOサイト内を検索

■非正規雇用者の人事・賃金制度の位置づけ・・・公正な労働市場の再構築

       
2011年10月25日    資本主義の暴走なのか。アメリカ社会の失業率の高さや雇用不安に反発する若者の「反格差抗議行動」が、全米そして世界へと拡大している。本来、経済は国民のためであるべきものであるが、ここしばらく続いている市場経済万能主義、グローバル化、規制緩和というアメリカ主導の世界経済システムでは、企業のためが優先され、国民とりわけ若者達は2桁の高い失業率に喘ぎ、経済から放り出されている状況が報道されている。
 そもそも市場経済のメリットは「市場で厳しく競争して、国全体が豊かになって、その豊かさを再分配政策で全員に分け与えることができる」とされてきた。しかし、世界の若者達の多くは、国全体の豊かさや市場経済による恩恵ではなく、多国籍企業や金融・保険業界に都合の良い不公正な経済だと感じているようだ。こうした状況をフランスのル・モンド紙記者ビビアンヌ・フォーレステールは「グローバリゼーションは地域共同体を破壊し、人間をむき出しの不条理の世界に投げ出す。そしてそれが、文化を破壊し、人間の尊厳をも踏みにじっている(「経済の恐怖− 雇用の消滅と人間の尊厳」)」と警告していた。
 資本主義経済の下での政策運営は、一方で市場での自由かつ公正な競争によって活力を引き出し、他方で競争によって生じた社会的格差の弊害を解消することで成り立っている。見逃してならないのは「公正な競争」と「弊害(格差)の解消」の2つである。公正な競争によって活力を引き出すには新たなルールが必要であり、弊害を解消するためには政府の是正策が不可欠となる。わが国の経済社会においても重要な役割を担うようになってきている、非正規社員の人事・賃金について考えてみたい。

 公正処遇による人材の積極的活用
 まず始めに、非正規労働の労使双方にとってのメリットについて整理してみよう。会社側にとっては、〇間や時季による繁閑の差への対応ができる、∋業のライフ・サイクルに応じて雇用の柔軟性が確保できる、新規あるいは専門的な業務に優れた人材を状況に応じて活用できる、だ亀社員(生涯人件費)と比較して人件費の節約ができる、などの特質がある。一方、働く側にとっては、ー己の意思と適性と能力に応じてキャリア形成ができる、⊆己のライフ・スタイル(出産・育児や介護等の事情)に応じて随時(勤務時間帯や勤務日地を自分の都合に合わせて)活かすことができる、A反ァ幣綮覆悗良従関係等)に縛られることなく自己の職業倫理に準拠した活動ができる、といった性格をもっている。
 労働力の需給両面からして、このようなメリットを持つ非正規労働は、新しい時代環境の中でその位置づけは一層高まってくるものと思われる。経済のソフト化やサービス化など世界経済が大きな構造変革の中にあって、非正規労働に適した職務、職種あるいは職能のセグメンテーション、つまり人材区分と制度化が必要になっている。また、積極的に「非正規社員をどう戦力化していくか」はこれからの日本の社会、産業にとって重要な人材課題となると考えられる。
 その課題に適切に対応していくには、非正規社員の賃金水準を公正に維持するとか、処遇基準を明確にするなど、前向きの処遇条件で、そのメリットを存分に活かすという基本姿勢にある。

 賃金・処遇条件の整備と処遇基準の明確化
 わが国でも、多様な雇用形態が可能(労働市場の規制緩和)になる中で、雇用形態の違いによる所得格差が鮮明になってきている。だからといって「規制緩和は間違いだ」とは一概にはいえない。なぜなら規制緩和がされなければ、非正規社員が正社員として雇用されるという保証はない。非正規社員の代わりに失業者が増える可能性だってある。また、「雇用期間を長く制限する」といった議論もあるが、雇用期間を制限したからといって非正規社員が正社員になれるわけでもない。むしろ非正規社員の雇用を不安定にさせるだけである。
 問題の核心は、正社員と非正社員の間における身分格差ではなく、同じ仕事であれば同じ賃金が支払われる「同一労働・同一賃金の原則」を実現することである。また、通常の正社員の場合、その賃金は生涯労働の前半では仕事や能力に比べ低く、後半で高くなる仕組みとなっている。非正規の場合、賞与の生活一時金も含め賃金のバランスをとることが必要になる。加えて、社会保険の会社負担分や退職金等の労働条件が異なるのも不公平である。これらの点を考慮した上で、労働時間の差が賃金の差に表れるならば、非正規社員も納得するであろうが、現状は時間当たり賃金も正規・非正規の身分によって差がある。
これらの点が政労使の合意の上で解決されなければ、雇用調整策としてのワーク・シェアリング(多様就業対応型)も政府が推進しているワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の推進も難しい。
 もう1点は、処遇基準の明確化である。雇用形態(労働態様)に応じて、非正規社員の昇格、昇進、そして昇給の処遇基準を整備し、明示することである。そうすることで、人材の確保、意欲の高揚、仕事への挑戦と創造を促進する上で役立つと共に、職場活性や人間関係を明るくする上でも役立つ。正社員の場合は、長く勤めることから、年月の経過の中でなんとか賃金の公平・公正さを調整保持していくことができるが、非正規社員の場合、その時、その時点で仕事や能力にそった賃金を正しく決めることが大切で、それができるように、賃金(時間給)の絶対額を示した「賃金表」が是非とも必要になる。
 今後の非正規社員の仕事の内容が質的に一層高まっていくことが期待されるだけに、処遇条件をきちんと整備し、これらの処遇基準が公正・公平であることを非正規社員側にオープンにされていること、この2つが人材の積極活用の要件となる。

 雇用形態(労働態様)に応じた柔軟な処遇システム
 非正規社員の採用、配置、育成の今後の方向として3つのタイプが考えられる。賃金制度などの処遇システムも、おのずからその3つのタイプに即した形で設定されることが適切である。
 第一のタイプは、「職務」基準労働である。職務内容が比較的定型化ないしは標準化されていて、個人差の入る余地がないか、あっても極めて小さな仕事である。採用のときそれ程職務経験を必要とせず、採用後も熟練形成の限度レベルに比較的はやく到達することができる。評価はその職務基準への取り組み姿勢としての執務態度考課が行われ、育成も仕事内容に沿っての訓練が中心となる。なお、かなり困難度の高い職務であっても、定型化ないし標準化することによって、非正規社員の対象とすることは可能である。このタイプの賃金表は、職務等級別にシングルレート(同一額)とするか、レンジレート(幅のある額)とするかの検討を要するが、いずれにしても職務給が基本とされる。
 第二のタイプは、「職種」基準労働である。社会的労働市場が形成されているような職種、例えば介護士や看護士、プログラマーやオペレーター、ホテルのウエイターやボーイ、建設関係の大工、左官、などの一定の技能、技術を身につけている職種などが、対象になる。
 採用時には当該職種についての専門的な知識・技術・技能・経験が求められ、それらを活かす人材として採用、配置がなされる。評価は業績考課と同時に、場合によっては能力考課も行なわれ、育成も職務訓練に限定されずより広い専門的職種教育の機会が多角的に提供される。職種基準の賃金の場合は、職種がその遂行に免許・資格等を要するものであればあるほど、賃金水準は高くなる傾向があり、賃金表は職種給で経験年数で割出した基準が用いられていることが多い。 
 第三のタイプは、「職能」基準労働である。当初は比較的簡単な職務についてもらうとしても、その後の経験と職能の高まりと広がりの中で、業務を促進していくことを期待するタイプである。例えば、新たな進出分野や技術、技能等に対応するための諸事情、諸条件の変化に対応できる人材である。
 非正規社員であっても、比較的長い勤務継続を会社側も労働者側も期待できる状況の下では適応できる。評価は正規社員と同様に業績と能力の両面で行なわれ、育成も社員の教育体系に沿って行われる。なお、本人の意思と適性と能力によっては正規社員の道も十分用意される。

 これからの非正規雇用者の人事・賃金の方向について考えてきたが、これまでの雇用慣行は、過去の高い経済成長の時期に普及した働き方であり、低成長期には維持することが困難になっている。また、一度採用されれば仕事や能力に関わらず定年までの雇用と年功賃金とが保障されるという働き方は、今後の厳しい国際競争の時代には成り立たない。労働市場への参入・退出が容易な労働市場の発展が急務である。時代は、多様な働き方の機会を拡大させるための労働市場の規制改革を求めている。公正な労働市場の再構築こそが、既に存在する正規社員と非正規社員との格差と少子化を防ぐための基本といえないだろうか。
ページトップへ
MCO 有限会社マネジメント・コンサルタント・オフィス
〒232-0036 横浜市南区山谷72-1-710 Tel:045-334-7680(代表) Fax:045-334-7681