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■職場活性化の実例・・・・P.F.ドラッカーのIBM物語

       
2011年5月30日    「日本企業の経営における強みは何か」という問いに対し、回答した440社の経営者は「人材」「チームワーク」「勤勉さ」というキーワードを多く挙げている(日本能率協会「2010年度 当面する企業経営課題に関する調査」2010年10月)。また日本生産性本部の「JPCマネジメント・イシュー」調査結果(10年8月)によると、最重視する経営課題として「人材育成の強化」を挙げた企業は51.1%と過半数に上っている。
 しかし過去20年間に日本企業が行なってきた、成果主義(結果主義)の導入や組織のスリム化(権限委譲は伴わない階層削減)、非正規社員の増加(正規社員の削減)といった組織や人事施策を考えると、いま本当に人材が経営上の強みとなっているのだろうか。むしろ人員の削減や価値観の多様化等によって職場管理者の負荷が増大し、職場のチームワークや仲間意志(協調性)が低下して、職場は弱体化しているのではないだろうか。こうした疑問に対する非常に興味深いデータがある。労務行政研究所の80周年記念シンポジウムで行なった調査では、人事担当者の7割が自社における「仕事力の衰え」を感じると答えている。個人の仕事力は職場環境の影響を強く受けることから、なにより職場が元気でなければ個人の仕事力は育たない。では「元気のある職場とは」どんな職場をいうのだろうか。また、職場を活性化させるための「成功の原則」はあるのだろうか。

 IBM社の革新(労働者とその仕事の管理についての基本的問題と解決のための原則)
 P.F.ドラッカーはマネジメントの役割(「経営者の条件」1966年)の中で、「仕事を通じて働く人を活かす」ことを指摘している。そもそも人間は、自らの能力を存分に発揮し、自己実現し、社会に貢献することを求めていること。そして、生き生きと生産的に働くことのできない組織からは、人が去っていくといっている。また、「仕事をする主体は、人間であることを忘れてはならない」とIBM社の実例をもって成功の原則を以下のように示している(「現代の経営(下)」1987年 現代経営研究会訳、ダイヤモンド社)。
  職務範囲の拡大
 『作業そのものはできるだけ単純化するよう計画され、一方労働者には、単純化された作業をできるだけ多く受けもてるように訓練が施された。労働者に分担する仕事のうち少なくとも1つは、ある程度の技能と判断とを必要とするように工夫をし、職務間の範囲を広げて仕事のリズムに変化を与えるようにした。こうして労働者は生産過程に参画することになり、この方法によりIBM社は生産性を絶えず向上させたばかりでなく、労働者が自分の仕事に対して持つ誇りが増大した。』
 また『どの職場にも1名以上の職務指導員が置かれ、彼らは自前の仕事を行なう以外に、経験の浅い労働者を助けて高い技能を身につけさせるとともに、経験や判断を必要とする問題の解決を体得させる年長の労働者である。そして、その地位は労働者のあこがれの的であり、高い威信を備えているばかりか、経営担当者となるためのすばらしい準備(昇進の機会)でもある。IBM社は昇進候補者を見出すことが容易になったばかりか、昇進させた後の仕事のことや部下掌握のことで頭を悩ますといった事態も、ほとんどみられなくなった。』(『』は引用文、以下同様)。
  製品計画への参画
 『設計がまだ完成していないうちに、その生産にとりかからねばならなくなってしまった。そこでやむなく、最終的な部分は、生産現場において設計技師と職長と労働者が協力して設計を完成させた。その結果、優れたデザインの製品ができあがり、生産の技術的過程も改善されたばかりか、「低いコストで迅速に」という要求まで満たされるようになった。それ以後この経験は、IBM社が新しい製品を生産するか、ないしは現在の製品に大きな変更を加えるときにはいつも適用されている。製品のデザイン、生産費、生産速度、労働者の満足といった点で、常に成果をあげてきたのである。』
 生産高(目標)の自己統制
 『IBM社では、長年にわたって、標準生産高が決められており、これに対しての基本賃金のほかに、標準を越えた部分に対しては報奨金が払われるという一般的な方式をとってきた。1963年になってこの伝統的なやり方をやめ、生産高に対応する賃金の代わりに固定給を支払うことにした。各労働者は標準生産高を上から押し付けられるのではなく、職長と共に自らの生産量を決めることができるのである。もちろん会社側も労働者側も、通常どれくらいの生産量が標準となるかをよくわきまえているが、新しい作業方式の導入による生産過程または仕事の大変革が行なわれた場合でも、標準生産高の決定は彼ら自身の手に任されている。IBM社においては、標準生産高といったものはなく、各労働者は上長の助けをかりて、最大の生産をあげうるように仕事の速度と流れを自ら考え出しているのである。この結果、職長も労働者もともに訓練、そしてとくに配置の問題に対して著しく関心を高めるようになった。職長は、各労働者を最も適した仕事につけるように懸命に努力し、また労働者は、最適の仕事を発見すること、ないしはよりよい仕事をするための技術を身につけることに努力するのである。』
  市場(雇用)第一主義
 『IBM社の経営者は、不況期において、雇用を維持することを自らの任務としようと決心した。これを達成する方法は明らかにただ1つしかなかった。すなわち、新しい市場を開拓することであった。市場を見出しこれを育成することに成功を収め、雇用は確実に維持されてきた。この結果、労働者は「働きすぎて職を失う」を全然恐れない。彼らは自分の生産高を制限しないし、仲間の一人がより多く生産しても憤慨したりはしない。つまり、それによって彼らの標準生産高が引き上げられたり、仕事を失ったりすることがないからである。そして彼らはいかなる変化をも受け入れることができるのである。』また、『IBM社の役員が述べた言葉は、大いに傾聴するに値するといってよい。「不況中も雇用を維持しえたのは当社が発展したからだ考えるのは正しくない。当社は雇用の維持を任務としたからこそ発展したのである。この任務があったからこそ、われわれは製品の新しい顧客と用途を見出そうとし、さらには新しい製品によって、埋れた顧客の欲求を導き出すことに力を注いだのである。海外市場を発展させ、輸出の促進を図ったのもまたそのためであった。もし不況中も雇用を維持することを公約しなかったならば、われわれは、機械の世界的メーカーにも輸出者にもなり得なかっただろうと確信している。」』

 人間労働の本質とは
 IBM物語の中からドラッカーは、「働く人間とその仕事の管理」について、その取り組むべき課題をあげている。
 その第1は、『人的資源の特性をはっきりとらえる必要があるが、その結論は、資源の二字を重視するか、人的の二字を重視するかによって非常に異なったものとなる』と指摘している。『人格というものは、その所有者だけが利用することができるものである。人間と他の資源との究極的な相違はまさにここにある。人格を有するものは、それぞれ固有の、そして独特な資質を持っている。そればかりでなく、人間の働きは全てその人の意思にかかっている。独裁者は、往々にしてこの事実を看過するが、たとえ強制力をもって臨んでも、人間をほんとうに動かしうるものではない。したがって、人間資源については、つねに資源そのものが自主的に働く意思をもつようにするにはどうしたらよいかを、考えておかなければならない。』
 第2には、『企業が労働者に対していかなる要求を持っているかということ、また市民である労働者が企業に対してどのような要求を持っているかということを、あわせて考察しなければならない』といっている。このことは裕福になった社会では、恐怖心(ムチ)が労働者を積極的に労働させるためになんの役にもたたなくなったこと。また、恐怖心が除去されれば、労働者は働く意欲を起こすかといえば、実は決してそういうことにはならないことを指摘している。したがって、恐怖心にとって代わる積極的な誘因(動機づけ)をつくり出すことが、経営者にとっての困難かつ、緊急な仕事(役割)であるといっているのである。ただ待っているだけでは、労働者のヤル気を期待することはできないのだ。
 第3は、『企業の立場からは人件費はコストであり、労働者の立場からは収入とみなされる賃金に関して、両者をいかに両立させるかの問題』を挙げている。これはチームワークの問題であり、仕事を組織(配分)する際に、集団と個人の調和を考えることの重要性を指摘している。例えば、能力が高く積極性もある人が、もっと自分の実力を発揮したいとして、仕事の関連性も考えずに1人で勝手に仕事のやり方を変えたりしたらどうなるか。関連する仕事を担当している人の仕事のリズムをくるわせたり、困惑させ、結果として仕事の質も量も共に低下させることになりかねない。
 最後に、ドラッカーは人間の成長・育成の問題を取り上げている。つまり個別管理の重要性である。『人間の発展は他の資源と違って外からどうすることもできない。その人が現在持っている特性を改良したりすることはできない。それゆえ仕事は個人の成長を促し、また助けるものでなければならない。』
 「現代の経営」の中の「人間の特性」の注釈にこんな説明がある。『第二次大戦後アメリカを訪れたヨーロッパ諸国の産業使節団(マーシャルプラン=欧州復興計画の援助協定により欧州の経営者や技術者が米国の生産性研究のため渡米した)の調査報告書には、アメリカの高い生産性は優れた技術や能率のよい機械設備によるものだと考えていた。しかし視察した結果、生産性向上の鍵が、まさに経営者と労働者の精神的態度にあるという事実を確信するようになった。』まさに、労働の生産性は労働者の働く意思の「動機づけ」いかんにかかっているのである。

 小事務所ホームページ「現場力を高める職場の活性化」への質問に応えて、今月から「職場活性化のツールと前提条件」と「職場の活性化プロセスと導入ステップ」を追加致しました。訪問をお持ちしています。
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