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■生産性と賃金と春闘・・・グローバル化時代の新たな争点

       
2010年2月16日    厳しい経営動向と雇用情勢の中、労使を代表する経団連と連合の首脳会談(1月26日)によって、2010年度の春闘が事実上スタートした。昨年に引き続き経営側は「企業の存続・発展、従業員の雇用の安定が最重要課題として、定昇凍結も議論する構えで、定昇維持をめぐる激しい交渉が予想される」ことがニュースで報道されている。

 これまでの春闘では、ベアや一時金が争点となり、新卒採用、長期雇用という日本型雇用管理のもとに組み込まれた定昇にまで踏み込んで議論されることはなかった。それが世界同時不況の昨年の春闘からは、「月額給与がマイナスにならない限り、定昇割れでもマイナス(賃下げ)ではない(大手自動車)」とする経営側の主張によって、春闘は大きな転換期を迎えている。

 <定昇とベアと賃金決定>
 これまで、わが国の多くの賃金交渉は、企業の支払い能力に応じて、定昇込み平均でいくら上げるかをまず決め(昇給原資)、これを現行の賃金体系や賃金カーブを維持するという形で(原資配分)、一人ひとりの賃金を決めてきた。
 また、わが国の賃金は、初任給から始まって学歴、年齢、性別の年々の勤続昇給をこれに積み上げていくという、いわば積み上げ方式(昇給制度)をベースとしてきた。したがって、「こういう仕事をこの程度やっているといくら」といったような、賃率概念(個別賃金)が乏しいのが一般的であった。
 さらに、企業内労働市場が賃金決定の基本であることから、福利厚生を重視し、したがって社宅や通勤やその他のいろいろの手当や賞与など、何もかも込みにして、とにかく生活ができる水準であればよいといった考え方が根強い。このため賃金は手当をつけ足した総額として捉えがちであり、こうした面からも個別賃金意識(賃金構成の内訳)を、一般的に乏しいものとしていた。

 賃金とは“労働または労働力の対価”である。労働側にとっては賃金は消費した労働力を再生産するための費用(生計費)であり、経営側にとっては労働を確保するための費用(労働コスト)である。したがって、賃金は「生計費(労働力)」と「労働」という2つの側面(銘柄)を持っている。この銘柄別の賃金を個別賃金(例えば、本人給や職能給等の賃金表で示される)という。従業員一人ひとりの賃金つまり個人別賃金は、この個別賃金(賃金表)をもとに決めていくことから、この賃金表のことをベースという。
 つまり、各人の賃金を決めるベースとなる賃金表を書き替える(賃金水準のアップ)のがベースアップ(ベア)であり、この賃金表の中で各人が、例えば年齢が1歳、仕事の経験が1年、それぞれ重ねることによって、賃金が賃金表の中で上がる(場合によっては下がることもある)のが定期昇給(定昇)である。このように昇給とベアは異なった性格のものであるから、両者をハッキリ区別し実施しないと賃金制度は崩壊することになる。

 <定昇とベアの違い>
 さきにも簡単に述べたが、ベアは物価上昇とか初任給上昇および生産性向上によって行われ、一方の定昇は各人の仕事や能力や勤続や年齢をベースとして行なわれるものである。したがって、定昇は賃金表を設定した段階において、毎年どれだけの定昇が実施されるかは、労使の間ですでに決められた約束ごとであるから、それはその都度(春闘)に交渉されるのではなく、一定のルールに従って毎年実施されるものである。

 しかし、会社にその支払い能力(定昇)がない場合にはどうしたらよいか。
 その1つに「定昇の一時借上げ」という方法がある。会社は“定昇凍結”を一方的に通告するのではなく、定昇を可能にする生産性目標、すなわち経営ビジョンを立て、これの達成に向けて、労働側に協力を求めるのである。そして、生産性目標が達成された暁には、過去に遡って定昇の払い戻しを行なうという考え方である。当然、相手に協力を求めるのだから、この間の雇用保証が前提となる。「賃金と雇用のどちらを取るのか」といった、高飛車な姿勢では相手の理解と協力は得られない。
 加えて「定昇の一時借り上げ」を実施する場合は、以下の問題について事前に検討し労使で確認しておく必要がある。
 




一時借上げ期間中の賃金相当分は、生涯賃金ではマイナスに作用するので、収益改善後にその分の埋め合わせをどのようにおこなうか。
高年齢化が進む中で、年齢給のマイナス定昇分についての取り扱いをどうするか。
借り上げ期間中における退職者の賃金(特に退職金算定基礎)の取り扱い。
借上げ期間中の年次遅れ是正や昇格昇給の取り扱い。(定昇範囲の明確化)
賃金水準が低く定昇率の高い若年層と一定の賃金水準に到達し定昇率の低い年齢層を一律に取り扱うのかどうか。(定昇の借り上げ対象範囲)

 <生産性と賃金との関係>
 企業の生産性は賃金決定の1つの要素に過ぎない。その他に賃金を決める要因として、労働力の需給事情や生計費の変化などがあり、従って生産性だけで賃金を決めることはできない。
 しかし、長期的、マクロ的には定期昇給を吸収できるだけの生産性向上が、絶対的な要件(従業員の新陳代謝による人件費差という考え方もあるが)となる。したがって、生産性と賃金の問題を考えるにあたっては、少なくとも定昇を可能にする生産性向上に向けて、労使があらゆる努力を払う必要がある。それには、たえず周囲の情勢や状況を把握すると同時に、それらの変化と賃金の結びつきのあり方について、考え方や政策を整理しつつ、それを一定のルールとして設定し、労使の間で納得しあっていくことが必要となる。

 ところで、生産性と賃金との関係は、どのような点がポイントとなるのだろうか。
 一般的な理解として、企業は資本と労働の結合(両者の比率を労働装備率という)によって生産活動を行い、生産されたものは一定の付加価値(利益等)がかけられ販売されている。この付加価値とは、「労使が生産活動を通じて新しく生み出した価値」であり、売上から外部購入費(原材料等)を控除して計算される。売上高の中に含まれている付加価値の割合を付加価値率というが、この付加価値率が高ければ高いほど、有利な生産活動を行っていると一般的にはいえる。
 付加価値は労使が生産活動を通じて生み出したものであるから、労使双方に配分されるのが原則だ。つまり、労働者側に還元されるのが賃金であり、資本に還元されるのが利益である。付加価値が労働と資本にどういう割合で分配されるのかを分配率と呼ぶが、労働者側への分配(人件費)は労働分配率で示されるのが普通である。
 以上から、付加価値が大きければ賃金や利益は大きくなるわけだが、実際には付加価値や賃金、利益の大きさよりも、それが賃金や利益に還元される場合は、その総額としての大きさより、一人当たりまたは資本当たりの大きさが問題となる。いくら付加価値が大きくても、投下された労働や資本の量も大きければ、配分された場合の一人当たり、資本当たりの賃金や利益は決して大きなものとはならないからである。つまり、労使双方が問題としなければならないのは、投下された労働や資本の量との対比でみた付加価値の大きさということになる。
 通常は、資本集約的産業ほど、つまり労働装備率が高いほど労働分配率は低くなり、労働集約的産業ほど労働分配率は高くなる。賃金を上げるためには一人当たりの付加価値(付加価値生産性)を上げるか、労働分配率を上げるしか方法はない。そして、付加価値生産性を上げるには、物的生産性(一人当たりの生産量)の上昇、販売価格の引き上げ、付加価値率の増大(売上高付加価値率)、分配率の縮小の4つのいずれかが必要である。
 以上から、生産性と賃金に関する労使間での分析、交渉は、これら4つにかかわる各指標を取り上げ、過去10期程度について時系列分析を加えながら、今後の自社の事業戦略に即して賃金交渉をしたいものである。

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